調達・販売停止で収益減少、在ロシア日系企業景況感調査

(ロシア、日本、ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2023年02月22日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から約1年後の在ロシア日系企業の景況感は、軍事侵攻をきっかけにリーマン・ショック後並みに落ち込んだ2022年5月を底にやや回復したが、引き続きマイナスだった。調達・販売の停止によって収益が減少している様子が浮かび上がった。

自社の景況DI(注)の最近の状況はマイナス49で、軍事侵攻後に最も落ち込んだ2022年5月(2022年5月25日記事参照)を底に、前回調査(2022月9月9日記事参照)と比べて8ポイント上昇したものの、3期連続のマイナスとなった(添付資料図1参照)。景況感を「悪い」と回答した企業からは、「輸出管理強化により日米欧いずれからも出荷できない製品・部品が増えているほか、対象外製品についてもレピュテーションリスクにより出荷を差し控えている」「販売がほとんどなく赤字」といった声が寄せられ、企業の多くが製品・材料の輸入停止や、販売・出荷の停止によって収益が減少している様子がうかがわれた。

景況見通しDIの2カ月後の状況では、前回比12ポイント増加のマイナス49だった(添付資料図1参照)。「戦争状態が長期化する見通しを受け、ビジネス環境は2カ月では改善せず、ロシア関係の収益減少はさらに継続するとみている」(「悪い」と回答した企業)など、情勢の長期化を不安視する声が聞かれた。

製品・サービスの自社販売価格DIは前回から変化なく28で、引き続き上昇傾向にある(添付資料図2参照)。「不変」と回答した企業が最も多かったが、在庫希少のために値上げ後の価格を維持しているとの回答があった。また、販売停止により評価できない層も一定数存在した。

製品在庫DIは前回比1ポイント減少したが、在庫不足が続いている(添付資料図2参照)。「不足」と回答した企業からは、自社の輸入停止のほか、日本からの輸出手続きでの通関審査に多くの時間がかかっていることや、半導体・電子部品不足などが影響しているとの声があった。

資金繰りDIは前回比3ポイント減少のマイナス30で、悪化傾向にある。在庫処分や通貨ルーブル送金によって運営資金を確保しているという声(「不変」と回答した企業)のほか、物流停滞による在庫不足や調達価格の上昇により収益が悪化し、資金繰りが圧迫され始めているとのコメント(「悪化」と回答した企業)もあった(添付資料図2参照)。

今回の調査は1月24~31日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業とサンクトペテルブルク日本商工会加盟企業198社を対象に実施し、99社から回答を得た。調査結果の概要はジェトロウェブサイトに掲載されている。日系企業の現在の事業ステータス、今後の事業見通しなどについては2023年2月22日記事を参照。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。景況感DIは「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした企業の比率を引いた数値。製品・サービスの自社販売価格DIは「上昇」から「下降」の比率を引いた数値、製品在庫DIは「不足」から「過大」の比率を引いた数値、資金繰りDIは「改善」から「悪化」の比率を引いた数値。

(菱川奈津子)

(ロシア、日本、ウクライナ)

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