在ロ日系企業景況感、リーマン・ショック後並みに悪化

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年05月25日

ジェトロは5月11~18日、在ロシア日系企業景況感調査を実施した。自社の景況DI(注)と景況見通しDI(2カ月後の状況)は、前回調査(2022年2月22日記事参照)結果から大きく悪化、新型コロナウイルス感染拡大期を下回り、過去最悪だったリーマン・ショック後(2009年4月)並みに落ち込んだ。

景況DIは前回比92ポイント減のマイナス63、景況見通しDIは81ポイント減のマイナス67だった(添付資料図1参照)。物流の混乱や、西側諸国による対ロ制裁、企業自身の生産・受注・営業の停止によって販売活動が停滞している状況だ。2カ月後の景況については、ロシアのウクライナ軍事侵攻や経済制裁の長期化を不安視する声が聞かれた。

販売価格DIは前回比12ポイント減の31、製品在庫DIは同17ポイント増の65となった(添付資料図2参照)。3月中旬以降、通貨ルーブル高傾向が続いているものの、物流や原材料費の高騰が依然として製品価格の上昇圧力となっている。6期連続となった在庫不足は、ロシア向けの出荷停止や物流費の上昇の影響を受けた。販売活動が滞る一方で運営コストが増加し、資金繰りDIは前回比50ポイント減のマイナス42と、新型コロナ以来のマイナスとなった。

今後1~2年の事業展開見通しは、「維持」と「縮小」がそれぞれ30%を占めた。他方、「不明・該当せず」と答えた企業も33%を占め、先行き不透明な状況を反映した結果となった。「拡大」は前回比29ポイント減の2%、今回新たに選択肢を設けた「撤退」は4%だった(添付資料図3参照)。

最近または2カ月後の景況感を「さほど良くない」もしくは「悪い」と回答した企業に対して、ロシアのウクライナ侵攻から約3カ月の現時点で、自社の景況感に特に影響を与えている要因を尋ねた(複数回答)。結果では「物流の混乱・停滞」(77%)、「事業継続によるレピュテーションリスクの増大」(57%)、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」(53%)、「西側諸国による対ロ制裁」(52%)の割合が多かった。

今回の調査は、モスクワ・ジャパンクラブ商工部会とサンクトペテルブルク日本商工会の協力の下、ロシアに所在する日系企業211社を対象に実施し、90社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は10社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は80社だった。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。景況感DIは「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした企業の比率を引いた数値で、同様に製品・サービスの自社販売価格DIは「上昇」から「下降」の比率を引いた数値、製品在庫DIは「不足」から「過大」の比率を引いた数値。資金繰りDIは「改善」から「悪化」の比率を引いた数値。

(菱川奈津子)

(ロシア)

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