ロシアのウクライナ侵攻から1年、在ロシア進出日系企業の6割が事業停止

(ロシア、日本、ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2023年02月22日

ロシアによるウクライナ侵攻から約1年が経過した時点で、ロシアに進出する日系企業のうち、一部もしくは全部の事業を停止している割合は6割に達した。企業が撤退や事業停止に至った要因として、本社のロシアビジネス方針の変更のほか、レピュテーションリスクや物流の停滞が挙がった。他方、通常どおり(今後の対応を検討中を含む)の事業運営を行う企業は、物流の停滞や決済の困難、対ロシア制裁による制限に直面している割合が多かった。ロシア事業の進退の見極めは難しい状況にあるものの、侵攻から半年に実施した前回調査に比べ、今後半年から1年後の方向性を決定した企業が増加した。

ロシア進出日系企業のうち、一部もしくは全部の事業停止を行う割合は前回調査(2022年8月、2022年9月9日記事参照)から11.1ポイント増加し、60.6%だった。「通常どおり」(35.4%)は10.4ポイント減少した。「撤退済みもしくは撤退を決定」は全体の4.0%(前回4.7%)だった(添付資料図1参照)。

「撤退済みもしくは撤退を決定」と回答した企業は、撤退に至った外部要因(複数回答)として、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」(100.0%)、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」と「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(ともに75.0%)を上位に挙げた(添付資料図2参照)。

「一部事業の停止」もしくは「全面的な事業停止」と回答した企業は、事業停止に至った要因として、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」(61.7%)、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」(60.0%)、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(48.3%)を上位に挙げた(添付資料図3参照)。

「通常どおり」と回答した企業は、事業運営上の困難として「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(68.6%)や、「決済の困難(ロシア国外との決済)」と「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」(ともに62.9%)を挙げた(添付資料図4参照)。

今後半年から1年後の事業展開見通しでは、前回調査に比べ、「不明・該当せず」(14.1%)が7.4ポイント減少した一方、「撤退」(10.1%)が4.5ポイント、「縮小」(37.4%)が1.9ポイント、「拡大」(1.0%)が1ポイント増加した。「維持」(37.4%)は前回から変化はなかった(添付資料図5参照)。

アンケートは1月24~31日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業とサンクトペテルブルク日本商工会加盟企業198社を対象に実施。99社から有効回答を得た(有効回答率50.0%)。調査結果の詳細はジェトロのウェブサイトに掲載されている。なお、同アンケートで調査した在ロ日系企業の景況感については2023年2月22日記事参照

(菱川奈津子)

(ロシア、日本、ウクライナ)

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