BMW、リオティントのカナダ工場から低炭素アルミニウム調達

(ドイツ、カナダ)

ミュンヘン発

2023年02月28日

ドイツ自動車大手BMWは2月21日、英国・オーストラリア資源大手リオティントのカナダ工場から、低炭素アルミニウムを調達する覚書を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

BMWは2024年から低炭素アルミニウムを調達、米国サウスカロライナ州スパータンバーグ工場(2022年生産台数:41万6,301台)でボンネット製造などに使用する。リオティントによると、BMWに供給する低炭素アルミニウムは、BMWがアルミニウム部品に関して定めている現行基準値と比較して、温室効果ガス(GHG)排出量を最大70%削減することが可能だという。

今回、BMWがリオティントから調達するアルミニウムの精錬技術はエリシス(ELYSIS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと呼ばれ、アルミ製錬工程でGHGを直接排出せず、酸素のみを放出して金属生産を可能にする画期的な技術だ。同製造法は2021年に実用化され、BMWは大量供給を受ける最初の顧客のうちの1社となる。加えて、アルミニウムの生産には水力発電の電気を使うほか、アルミニウムは再生材の割合を最大5割までとする。

BMWは、遅くとも2050年までにバリューチェーン全体で気候中立を達成することを目標に掲げ、2030年までに、車両1台当たりのスコープ3上流(注)での二酸化炭素(CO2)排出量を2019年比で少なくとも20%削減することを目指している。BMWによると、車の製造原材料では、特にアルミニウム、鉄、プラスチックのCO2排出量が多い。中型のバッテリー式電気自動車(BEV)ならば、サプライチェーン全体のCO2排出量の約4分の1がアルミニウムによるものだという。このため、低炭素アルミニウムを調達する意義は大きい。

自動車メーカーの間では、サプライチェーン全体のCO2削減のため、低炭素アルミニウムやグリーン鉄鋼を調達する動きが相次ぐ。メルセデス・ベンツは2022年12月、ノルウェーのアルミニウム大手ノルスク・ハイドロから低炭素アルミニウムの供給を受けると発表した(2022年12月22日記事参照)。BMWは2022年11月、米国と中国で生産過程でのCO2排出量が少ない鉄鋼を調達すると発表したほか(2022年11月28日記事参照)、ドイツ鉄鋼メーカーのザルツギッター、スウェーデンのスタートアップ企業H2グリーンスチールなどと、グリーン鉄鋼の調達で合意している(2022年2月14日記事参照)。メルセデス・ベンツ、欧州フォードなど他の自動車メーカーや、シェフラーなどの自動車部品大手でも、グリーン鉄鋼調達の動きがある(2021年11月19日記事2022年11月7日記事参照)。

(注)温室効果ガス(GHG)排出量の算定、報告の基準の1つ。そのスコープ1では、事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)を対象にする。スコープ2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出。スコープ3では、スコープ1とスコープ2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)にまで踏み込む。「スコープ3上流」とは、スコープ3のうち原材料調達やその輸送に関する部分のこと。

(高塚一)

(ドイツ、カナダ)

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