2015~2020年に再エネへ230億ドル、化石燃料へ6,370億ドル投資

(中東)

中東アフリカ課

2023年02月27日

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2月22日に、再生可能エネルギー(再エネ)ファイナンスに関する報告書を発表した(2022年2月27日記事参照)。報告書によると、再エネ、新エネルギー(水素など)、エネルギー効率化、交通電動化、蓄電、炭素回収(CCS)などを含む二酸化炭素(CO2)削減に向けた「エネルギー転換(Energy Transition)」に関する投資は、2022年に1兆3,000億ドルだった。2021年より19%増、新型コロナ禍前の2019年と比べると約50%増と拡大傾向だ。

2015年から2020年にかけては、再エネへの投資が世界で2兆9,720億ドルのところ、中東では世界全体の約0.8%の230億ドルと少ない。また中東では、同期間の化石燃料関連への投資が約6,370億ドルとなっており、再エネ投資の約28倍となった。

水素関連への投資に注目

中東の産油国では、油田の新規で探索、開発、インフラ整備などに投資を継続しており、再エネへの投資は限定的だ。一方で、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアでは、将来的な化石燃料に代替する新たな産業として、炭素回収や水素分野のプロジェクトも増えている(2022年11月9日付11月11日付地域・分析レポート参照)。IRENAによると、中東は将来的に水素の主要な生産・輸出地域になりえるという(2022年3月1日記事参照)。

報告書によると、2022年の水素関連への投資は世界では約11億ドルで、エネルギー転換全体の投資のわずか0.08%だが、前年比では約3倍と急増している。水素は、風力や太陽光とは異なり貯蔵も可能であり、エネルギー転換に向けた新たなエネルギーとして、水素生産のほか、貯蔵・輸送・インフラへも投資が進んでいる。用途としては、鉄鋼、アルミニウム、セメントなどの重工業向け、航空、船舶、大型トラックなどの輸送も想定されている。水素生産は、2021年時点では1キログラム当たり3ドルだったが、2050年までには1キログラム当たり1ドルまで下がる見通しがあるという。

世界各国が合意している「パリ協定」では、気温上昇を1.5度に抑える「1.5目標」の達成を目指しており、IRENAは、これに向けて2021年から2030年までの間に世界では年平均5兆7,000億ドルの投資ニーズがあるとしている。このうち、水素は年平均1,330億ドルの投資ニーズがあるという。

(井澤壌士)

(中東)

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