IRENAが報告書を発表、水素製造における中東・アフリカ地域の適性を評価

(アフリカ、中東、世界)

中東アフリカ課

2022年03月01日

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は1月15日、「エネルギー転換の地政学:水素ファクター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」という題目で報告書を発表した。同報告書は、土地や気候など地理的条件に恵まれた中東・北アフリカ(MENA)とサブサハラ・アフリカが水素の主要な生産・輸出地域になり得る、との見解を示している。

同報告書は、世界のエネルギー消費における水素の割合が、2050年には12%程度になると予測している。また、投資機会についても、現状として水素の年間販売額が約1,740億ドルと既に液化天然ガス(LNG)の年間取引額を超えているとし、2050年までに世界の水素販売額は6,000億ドルに達するとの見方を示している。水を再生可能エネルギーで電気分解し製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーン水素」については、バリューチェーンが今後30年間で約11兆7,000億ドル規模になるとしている。

同報告書は、現状で水素製造にはコストや技術面での課題があることを指摘しつつも、水素が経済の多角化と新たな輸出産業の育成において魅力的な手段となり得るとした上で、再生可能資源が豊富なMENAおよびサブサハラ地域は、水素製造において大きなポテンシャルを持っているとしている。これによると、サブサハラにおける2050年までのグリーン水素の生産能力(1キロ当たり1.5ドル以下)の潜在性は2,715エクサジュール(EJ、注)と世界トップで、次にMENAが2,023EJで続く。もっとも、主要な水素生産国になるには、政府の支援や政治的安定を含めた投資環境などさまざまな要素が絡み合うほか、アフリカには水素輸送パイプラインの建設などインフラ面での課題があるため、途上国への技術支援など、水素市場の発展に向けた国際協力を求めている。

同報告書は、MENAおよびサブサハラ地域で既に発表されている水素関連の案件をいくつか紹介している。たとえば、モーリタニア政府が、再エネ開発会社CWPグローバルがグリーン水素プロジェクトに係るMoU(覚書)を締結したことに加え、アフリカを拠点とするエネルギー企業チャリオット(Chariot)に対して、グリーン水素製造に係る最大10ギガワット(GW)の洋上・陸上風力の独占開発権を与えることでMoUを締結したことを紹介している。また、ナミビア政府が、国営グリーン水素協議会を設立したほか、風力タービンのブレード製造プラント、グリーン鉄鋼プラント、アンモニア製造ラインの建設を検討していることを紹介している。さらに、モロッコが、2019年に国家水素委員会を設立し、2021年1月に「グリーン水素ロードマップ」を発表したことについても言及している。

(注)エクサジュールは、10(ジュール)の18乗(エクサ)であることを示すエネルギー量の単位。

(梶原大夢)

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