米船級協会、海運で使用する不燃性電池技術実用化へ新技術認証

(米国、シンガポール)

ヒューストン発

2023年02月24日

米国の船級協会のアメリカン・ビューロー・オブ・シッピング(ABS、本社:テキサス州スプリング)は2月22日、シンガポールのジェンナル・エンジニアリングが開発した、海運で使用する不燃性電池技術に対して新技術認定(NTQ)すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。NTQは、新技術を早期に導入し、効率的に実装するための指針を提供するもので、新技術の成熟度や、潜在的なリスクがないかを体系的に評価する。

発表によると、ジェンナル・エンジニアリングが開発したレドックスフロー電池(注)は、充電と放電の過程で余分な熱が発生しないことが特徴だ。同電池の寿命は一般的なリチウムイオン電池の2倍の25年以上で、同電池の廃棄時にバナジウム電解質を容易に抽出し、リサイクル可能な設計だという。

ABSの技術担当バイスプレジデントのガレス・バートン氏は「この電池技術は、海運での電池利用を大きく変える可能性を秘めている。長寿命、エネルギー容量の大幅な向上、不燃性製品としての安全性の向上という利点がある。この技術は、海事産業のエネルギー転換を加速させ、世界の脱炭素化目標を支える可能性を持つものだ」と述べた。

ABSは脱炭素化に向けた取り組みを進めており、2022年10月に三井物産やデンマークのマースク子会社などと、船舶向けメタノール燃料供給事業で提携(2022年10月13日記事参照)したほか、ノルウェー・ロトブーストの二酸化炭素(CO2)燃焼前分離回収システム実用化へ新技術認証を発表している(2022年11月1日記事参照)。2月にはABS規格でカリフォルニア大学の水素燃料調査船建造を発表した(2023年2月16日記事参照)。

(注)バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池。電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命で、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能なことから、安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を有している。

(沖本憲司)

(米国、シンガポール)

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