米船級協会、ノルウェー・ロトブーストのCO2燃焼前分離回収システム実用化へ新技術認証

(米国、ノルウェー)

ヒューストン発

2022年11月01日

米国船級協会のアメリカン・ビューロー・オブ・シッピング(ABS)は10月31日、ノルウェーの水素関連企業ロトブーストの熱触媒分解(TCD)プロセスに基づく二酸化炭素(CO2)燃焼前分離回収システムを新技術認定(NTQ)すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。NTQは、新技術を早期に導入し、効率的に実装するための指針を提供するもので、新技術の成熟度や、潜在的なリスクがないかを体系的に評価する。

発表によると、ロトブーストのTCDプロセスにより、船舶で天然ガス(メタン)から水素を製造する際に、天然ガスを水素と固体炭素に変換することが可能となり、CO2の燃焼前分離回収が可能となる製造された水素ガスは、燃料電池や船舶内燃機関、ガス燃焼ボイラーの混合燃料として使用することができるという。ABSはこのプロセスを通じて、CO2排出量を大幅に削減可能だとしている。

また、水素ガスを混合燃料として使用することで、燃焼エンジンからのメタンスリップ(注)を大幅に削減し、固体炭素を燃焼前分離回収することで、粒子状物質(PM)の排出を削減することが期待されるとしている。

ABSのグローバルサステナビリティー担当バイスプレジデントのジョージオス・プレブラキス氏は「メタンを水素と固体炭素に分解することは、ガス燃料船上でCO2回収・貯留(CCS)ソリューションを導入するための賢い手法となる。この手法により、船上で必要となるガスの貯留量を減らし、固体炭素は燃料電池やバッテリーの製造に使用でき、何度でもリサイクルすることが可能だ。この技術の活用により、エネルギー転換を加速させ、世界の脱炭素化目標を支援することができる」と述べた。

ABSは脱炭素化に向けた取り組みを進めており、8月には米国エネルギー省(DOE)から先進的原子炉の商船への利用促進に向けた課題調査のため80万ドルの契約を受託し(2022年8月19日記事参照)、米国石油サービス企業NOVの海底アンモニア貯蔵技術にNTQを提供した(2022年8月31日記事参照)と発表した。10月には三井物産やデンマークのマースク子会社などと船舶向けメタノール燃料供給事業で提携したと発表した(2022年10月13日記事参照)。

(注)未燃焼のメタンの漏出を指す。

(沖本憲司)

(米国、ノルウェー)

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