米国民の半数が1年前より生活が苦しいと回答、NYでは家賃が収入中央値の約7割に、米民間調査

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月15日

米国調査会社のギャラップが2月8日に公表した調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国民の半数が1年前よりも経済的に生活が苦しいと回答した。同回答が半数以上に達するのは、いわゆるリーマン・ショック後の2009年以来となる。

本調査は202312日から22日にかけて、全国18歳以上の米国人1,011人を対象に実施された。調査によると、1年前よりも経済的に生活が苦しいと回答したのは50%で、2年連続で悪化した(2021年、2022年はそれぞれ36%、41%)。所得階層別にみると、世帯所得4万ドル未満では61%(前年:41%)、世帯所得4万ドル以上10万ドル未満では49%(47%)、世帯所得10万ドル以上では43%(33%)が苦しいと回答しており、特に低所得者層での悪化が目立つ。一方で、来年(2024年)は暮らし向きがよくなるとの回答は60%(前年:60%)、悪くなるとの回答は28%(27%)で、先行きへの楽観的な傾向は2022年と変わらなかった。なお、来年暮らし向きがよくなるとの回答は、民主党支持者70%、無党派60%、共和党支持者49%と党派別では違いがみられた。

こうした経済的に苦しい状況は、実質的に所得が目減りしている状態に起因している。賃金の伸びが現状4%台半ばなのに対して(2023年2月7日記事参照)、物価の伸びは6%台半ばで(2023年1月13日記事参照)、消費者の購買力を低下させている。物価上昇が消費者の購買力を低下させている典型例は家賃で、米国調査会社のムーディーズ・アナリティクスのレポートによると、20221012月期において、米国人の世帯収入(中央値)に占める全国の平均家賃の割合が、過去20年以上の調査で初めて30%を超えた。特に同比率が最も高かったニューヨーク(NY)市では68.5%となり、2位のマイアミの41.6%と比べると突出して高く、もともと物価の高い都市部を中心にインフレによる購買力の低下が進んでいるとみられる。

20221012月期のGDP成長率は2.9%、そのうち消費の寄与度は1.4ポイントで(2023年1月27日記事参照)、実質所得が低下しているこうした現状でも消費は比較的堅調さを保っている。その背景には、新型コロナ禍での余剰貯蓄があるが、それも2023年のどこかでは尽きてくる可能性があるとみられている(2023年1月10日地域・分析レポート参照)。この貯蓄が尽きるまでに、当局がインフレを鈍化させ、実質所得の目減りを改善させることができるかが、今後の消費を占う上で重要になってきているといえそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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