2022年の米GDP成長率、第4四半期は前期比2.9%、通年は2.1%で堅調さ示す

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月27日

米国商務省が1月26日に発表した2022年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率(速報値)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前期比年率2.9%増で、市場予想の2.8%増を上回った(添付資料図参照)。2022年第1四半期(1~3月)、第2四半期(4~6月)の2期連続のマイナス成長後、第3四半期(7~9月)、第4四半期は2期連続で3%前後の高成長となり、米国経済は堅調さを示した。

需要項目別に見ると、内需では個人消費が前期比2.1%増、寄与度1.4ポイントとプラスに寄与したが、伸びは前期の2.3%増から減速した(添付資料表参照)。個人消費のうち、財消費は前期比1.1%増(前期:0.4%減)と4期ぶりのプラスを記録する一方、サービス消費は2.6%増(前期:3.7%増)と2期連続で伸びが減速した。民間投資は前期比1.4%増、寄与度0.3ポイントと押し上げに寄与したが、設備投資は前期比0.7%増(前期:6.2%増)と減速し、特に機器類への投資が3.7%減(前期:10.6%増)とマイナスに転じた。連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの影響から、住宅投資も前期比26.7%減(前期:27.1%減)と2期連続で25%を超える減少率となり、個別項目で最も成長を押し下げた(寄与度マイナス1.3ポイント)。今回最もGDP押し上げに寄与したのは在庫投資で、寄与度は前期のマイナス1.2ポイントからプラス1.5ポイントと大きく改善した。特に製造業(主に石油、石炭、化学製品)、鉱業、公益事業、建設業(公益事業が主導)が牽引した。

外需では、輸出が前期比1.3%減、輸入は前期比4.6%減と、ともにマイナスとなったが、輸入がGDPの控除項目のため、純輸出の寄与度では0.6ポイントのプラス寄与だった。

2022年通年の実質GDP成長率は前年比2.1%となった。急速に進行するインフレや金利上昇が逆風となり、前年の5.9%からは大きく減速したものの、2022年中にも米国経済は景気後退期に入るとの観測もあった中で(2022年7月25日付地域・分析レポート参照)、結果的に潜在成長率(注)並みの成長を記録した。通年の寄与度でみると、個人消費が1.9ポイント、特にサービス消費が2.0ポイントとプラスに寄与し、サービス消費に大部分を支えられた経済成長だったと言える。

ただし、先行きに関しては依然として不透明さが残る。堅調なサービス消費の背景にあるのは、新型コロナウイルス感染拡大による消費抑制によって積み上がった余剰貯蓄にあると考えられているが、賃金上昇率を上回るインフレの進行により、その余剰貯蓄は減少傾向にある。インフレは鈍化傾向も高い水準で継続していることから、FRBはインフレの抑制を優先し、2023年も金融引き締めを一定程度継続する見込みで、高インフレ・高金利に個人消費がどこまで持ちこたえられるかが今後の米国経済の堅調さを占うカギだ。市場では、2023年の景気後退は避けられないとの見方も広がるが(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)、2022年の米国経済は市場の見方に反して堅調さを保ったことを示す結果となり、2023年も景気後退との見方を覆せるか、注目が集まる。

(注)連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による長期成長率(潜在成長率)の予測中央値(2022年12月)は1.8%。

(宮野慶太)

(米国)

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