配車サービス大手の滴滴出行、約1年半ぶりに新規ユーザー登録を再開

(中国)

北京発

2023年01月23日

中国の配車サービス大手の滴滴出行(DiDi)は1月16日、新規ユーザー登録の再開を発表した。2021年7月に中国政府が停止を発表して以来、約1年半ぶりとなる。

一方、中国政府の指示により、各アプリストアから削除されていた滴滴出行のアプリは、現時点で一部のアプリストアでのみ入手可能な状態にとどまり、全面再開には至っていない(注)。

滴滴出行は、2021年6月30日にニューヨーク証券取引所に上場した。しかし、同社が保有するデータについて、米国政府から情報開示を求められる可能性などが指摘されていたところ、同年7月2日に国家インターネット情報弁公室(以下、弁公室)が同社に対し「サイバーセキュリティー審査弁法」(2022年1月18日記事参照)に基づく審査を行うと発表(2021年7月9日記事参照)、審査中は新規ユーザーの登録を停止するとした。また、7月4日に、弁公室は滴滴出行のアプリに個人情報の収集・使用に関し重大な違法行為があったとし、各アプリストアに同アプリを削除するよう通知、7月16日には、公安部、国家安全部、自然資源部、交通運輸部、国家税務総局、国家市場監督管理総局と共同で同社に常駐して審査を行っていると発表した。

その後、滴滴出行は2022年5月にニューヨーク証券取引所での上場廃止を決定、7月21日には16項目の違法行為により80億2,600万元(約1,525億円、1元=約19円)の罰金が科された(2022年7月25日記事参照)。

今回の滴滴出行の発表では、「審査で発見された安全に関する問題について、全面的に改めた」とし、弁公室の同意のもとで新規ユーザー登録を再開したとしている。

2022年12月の中央経済工作会議(2022年12月27日記事参照)でプラットフォーム企業の発展支援が打ち出されたことが、政府のプラットフォーム企業に対する管理・監督の方向転換に向けたシグナルだったとの見方がある(「界面新聞」1月17日)。同時に、弁公室の同意は得られたものの、個人情報に関するユーザーや検察からの公益訴訟のリスクは残るとされる(「中国新聞週刊」1月17日)。

また、再開は経営にプラスではあるが、滴滴出行の月間アクティブユーザーは2021年7月の6,300万人から2022年1月の2,900万人に減少するなど、配車サービスは競争が激化しており、引き続き厳しい状況が続くとも報じられている(「紅星新聞」1月18日)。

(注)既にユーザー登録をしている場合、微信(WeChat)のアプリ内ミニアプリなどを通じてサービスを利用することは可能。

(河野円洋)

(中国)

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