配車アプリ大手の滴滴などにサイバーセキュリティー審査を実施

(中国、米国)

北京発

2021年07月09日

中国の国家インターネット情報弁公室は7月2日、タクシー配車アプリ最大手の滴滴出行に対し、サイバーセキュリティー審査を実施すると発表した。国のデータ安全リスクを防止し国家安全を守るため、サイバーセキュリティー審査弁法にのっとり審査を実施する(2020年6月5日記事参照、注1)。

同弁公室は7月4日、検査・確認の結果、滴滴出行アプリは、違法に個人情報を収集・使用しており、重大な問題があると発表した。さらに、サイバーセキュリティー法の関連規定に基づき、アプリストアに対し、滴滴出行アプリを削除するよう通知した。その上で、滴滴出行に対し、ユーザーの個人情報の安全を確保するため、法律にのっとり、指摘された問題を改善するよう求めた。

同弁公室は7月5日、運満満、貨車幇、BOSS直聘に対しても、同様にサイバーセキュリティー審査弁法にのっとり審査を行うと発表した(注2、注3)。

「環球時報」は社説で、「巨大インターネット企業に、国家よりも詳細な中国人の個人情報データベースを掌握させることも、それを許可なく利用できる権利を与えることも決してすべきではない」と主張した。さらに、「特に滴滴出行のように、米国で上場し、主要株主の第1位、第2位を外国企業が占めるような企業に対しては、国は、情報安全についての管理監督をより厳格にすべきだ」と指摘した(「環球時報」7月4日、注4)。

サイバーセキュリティー分野の重要法規の制定に関与した、中国信息安全研究院の左暁棟副院長は、今回の審査の主要な観点について「重要データと中国国民の個人情報の越境安全リスクだ」と指摘する。また、製品やサービスについて「そのサプライヤーが中国国内企業か国外企業かにかかわらず、国家安全に対するリスクがあれば、全て審査を受けなければならない」との見方を示した。さらに、審査主体のサイバーセキュリティー安全審査工作メカニズムは、公安部など計12の部門から組成されており(注5)、「これら部門のうちどれか1部門が、特定の製品やサービスに対し、国家安全に危害を与えるリスクがあると判断すれば、審査を実施できる」と指摘した(「南方週末」7月4日)。

PwC中国によると、2021年上半期に米国市場に上場した中国企業は35社に上る。北京師範大学インターネット発展研究院の銭憶親副教授は、今後より多くの企業が同様の審査の対象となる可能性を指摘した(「財経」7月5日)。

(注1)国家安全法およびサイバーセキュリティー法も審査実施の根拠法として挙げられた。審査期間中は、滴滴出行は新たなユーザーの登録を停止する。

(注2)これらのアプリも審査期間中は新規のユーザー登録を停止する。

(注3)運満満と貨車幇は、満幇集団(江蘇満運軟件科技、貴陽貨車幇科技)が提供するトラック配車アプリ。同社は、6月22日に米国ニューヨーク証券取引所に上場した。BOSS直聘は、看准科技集団(北京華品博睿網絡技術)が提供する人材マッチングアプリ。同社は、6月11日に米国ナスダックに上場した。

(注4)滴滴出行は、6月30日にニューヨーク証券取引所に上場した。

(注5)12部門の内訳は、国家インターネット情報弁公室、国家発展改革委員会、工業信息化部、公安部、国家安全部、財政部、商務部、人民銀行、国家市場監督管理総局、国家広播電視総局、国家保密局、国家暗号管理局。

(藤原智生)

(中国、米国)

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