2021年の米国平均気温は史上4番目の高さ、GHG排出量が前年比6.2%増と民間試算

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月17日

米国海洋大気庁(NOAA)は1月13日、2021年の米国平均気温は史上4番目に高かったことを毎年発表している気候報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で明らかにした。

同報告によると、2021年の平均気温はセ氏12.5度(カ氏54.5度)で、20世紀の平均を約1.4度上回った。過去127年間の記録の中で、最も平均気温が高かったのは2012年の12.9度で、平均気温の高い上位6年は全て2012年以降に発生しており、気候変動の影響が顕著にみられるという。同報告では、2021年は気候変動による災害が20件発生し、災害費用は1,450億ドルを超えたとした。特に死者数は688人に達し、この10年で最多となった。

気候変動に関連し、民間調査会社のロジウム・グループは2022年1月10日、米国の2021年の温室効果ガス(GHG)が前年比6.2%増加との試算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2020年は新型コロナウイルスの影響で前年比10.3%減としているが(2021年1月19日記事参照)、経済再開による反動から2021年は大きく増加した。特にガス価格高騰により代替としての石炭使用が増えたことから、石炭火力発電のGHG排出量が17%増と2014年以来7年ぶりの増加となり、電力部門全体でみても6.6%増加した。また、乗用車での移動が回復したことから輸送部門も10%上昇し、2020年の15%減から大幅増に転じた。なお、2021年の両部門のGHG排出は2019年水準の約3分の2まで戻ったとしている。

バイデン政権は、パリ協定に基づき、2030年までにGHG排出量を2005年比50~52%削減する目標を掲げているが、ロジウム・グループの試算によると、2021年は2005年比17.4%減と、2020年の2005年比22.2%減から減少幅は縮まり、目標達成からさらに遠ざかった。オミクロン変異株の経済への影響はまだ定かでないが、2022年も経済回復が進むとされることから、エネルギー需要はさらに回復する見込みだ。米国エネルギー情報局(EIA)によると、2022年の米国の平均原油生産量は2021年比で5.4%増の日量1,180万バレル、2023年はさらに5.1%増の日量1,240万バレルとなる見通しだ。2023年は2019年水準の1,230万バレルを上回るとしており、この点からはGHG排出は増加するとみられる。一方で、明るい兆しもある。EIAによると、2022年に寿命を迎える発電所のうち、石炭火力発電所が約85%を占めており、これに代わって、再生エネルギー電源が今後増えるとして、2023年の再エネ発電の電源構成割合は2021年の20%から24%に上昇するとしている。

米国各地では、最近になって洋上風力など再エネ電源開発が活発だ(2022年1月17日記事参照)。政府は、ビルド・バック・ベター法案に盛り込まれた環境対策でこの動きを後押ししたい考えだったが、同法案は現在、暗礁に乗り上げている(2021年12月13日記事参照)。ロジウム・グループでは、同法案が原案どおり実現されれば、2030年にGHG排出量を最大10憶トン(乗用車全ての年間排出量に相当)削減できる、と試算している。同法案が原案どおりに成立するのは難しい情勢だが、バイデン政権の環境対策の公約達成のメルクマールになり得るという点で、同法案の今後についても注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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