米国進出企業、事業拡大が5割近く、北米での販路拡大に向け、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(北米編)

(米国、日本)

米州課

2023年01月05日

ジェトロが2022年9月に実施したアンケート調査(注)「海外進出日系企業実態調査(北米編)」では、原材料・部品調達コストの上昇や人件費の上昇など、急激なインフレがさまざまな側面から在米日系企業の事業活動に影響を及ぼし、景況感を下押しする実態が明らかになった。

一方で、在米日系企業が米国を成長市場と捉えて事業拡大を継続するとの前向きな結果もみられた。今後1~2年の事業を拡大する企業は、前回調査(48.1%)に続いて5割近く(48.7%)となり、新型コロナ禍前の2019年(47.5%)を上回った。事業拡大の理由は、米国市場の「成長性、潜在性の高さ」(49.2%)が筆頭に挙がったほか、「現地市場での購買力増加に伴う売り上げ増加」(36.2%)が続いた。具体的に拡大する機能は「販売機能」が6割弱(59.1%)を占め、販売増を見込んだ「生産(高付加価値品)」(37.4%)、「生産(汎用品)」(22.2%)が続いた。

また、2022年の在米日系企業の製品の販売先は、製造業・非製造業ともに米国内(それぞれ77.8%、77.3%)が最大で、メキシコとカナダを加えた北米市場向けは8割を超えた(86.2%、84.8%)。今後の販売方針でも、販売を拡大するという企業数は米国(84社、65社)、メキシコ(44社、30社)、カナダ(29社、21社)の順に多く、在米日系企業が新型コロナ禍からの経済回復による需要増を見込んで、北米での販路拡大を目指す方向性がうかがえる。(添付資料「図1 製造業の製品の販売先および今後の方針」「図2 非製造業の製品の販売先および今後の方針」参照)。

販売先と併せて、原材料・部品調達コストの上昇や供給途絶リスクへの対応などを要因として、製造業を中心に日本から米国、中国から米国・メキシコなどへの調達先シフトの動きも顕著にみられたことから(2022年12月21日記事参照)、在米日系企業が北米での「地産地消」戦略を推し進めていることがうかがえる。

また、人件費の上昇などを要因として、生産体制見直しのために設備投資を増強する動きもみられた(2022年12月28日記事参照)。2022年の設備投資について、金額ベースで前年を上回る企業の割合は3割を超え(30.7%)、増加企業の割合は2年連続で上昇した。設備投資の目的は、「既存設備の維持・補修」(47.8%)、「増産・販売力増強」(28.2%)、「デジタル化への対応」(26.9%)、「省力化・合理化」(21.1%)が上位に挙がった。

(注)調査実施期間は2022年9月8~30日(日本時間)。調査対象は在米日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資および間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業および日本企業の支店。有効回答数は787社/1,841社(有効回答率42.4%)。調査は原則年1回実施しており、米国では1981年以降これが41回目。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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