米国進出企業、調達先を日本・中国から米国・メキシコにシフトの動き、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(北米編)

(米国、日本、中国、メキシコ)

米州課

2022年12月21日

ジェトロは12月20日、米国に進出する日系企業を対象とした現地での活動実態に関するアンケート調査(注1)「2022年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」の調査結果を公表した。調査結果からは、在米日系企業が新型コロナ禍からの米国経済回復による需要増を捉えつつも、急激かつ長期的なインフレによる原材料・部品調達コスト上昇や人件費上昇の圧力を受けている実態が明らかとなった(2022年12月20日記事参照)。

調達コストの上昇は、供給途絶リスクへの対応なども相まって、在米日系企業のサプライチェーン見直しにも影響を及ぼしている実態も見えた。調査によると、新型コロナ禍から調査時点までにサプライチェーンを見直した企業は5割弱(49.2%)、今後サプライチェーンを見直す予定の企業は5割を超えた(54.9%)。その主な見直し内容には、「販売価格の引き上げ」や「調達先の見直し」が上位に挙がった。

調達先の見直し内容を国・地域別にみると、日本から米国(28件)や中国から米国(15件)、中国からメキシコ(7件)へ変更する件数が多く、製造業を中心に日本・中国から米国やメキシコへの調達先シフトの動きが顕著にみられた。米国内からの調達比率は、製造業では国・地域別に最大となる49.5%だったほか、非製造業では38.8%と日本(43.0%)に次ぐ高さだった。今後の調達方針では、米国内から調達を拡大するとした企業数が製造業では83社、非製造業では48社と、ともに国・地域別で最大となった。他地域の進出日系企業と同様に(注2)、在米日系企業も現地化戦略を進めていることがうかがえる(添付資料「図1 製造業の原材料・部品の調達先および今後の方針」、「図2 非製造業の原材料・部品の調達先および今後の方針」参照)。

通商環境の変化の影響では、米中対立が「マイナスの影響」の筆頭要因に

通商環境の変化が業績に与える影響については、「影響はない」(34.5%)と回答した割合が最も高く、「マイナスの影響」(26.6%)が続いた。「マイナスの影響」を受ける具体的な政策は、トランプ前政権下で2018年7月から発動した「通商法301条に基づく追加関税」(52.4%)が最も多く、「中国の米国に対する報復関税」(34.0%)が続いた。米中対立が在米日系企業の活動に影響を与えている実態も浮かび上がった。在米日系企業の調達は米国やメキシコで拡大する一方で、中国では製造業、非製造業ともに縮小(それぞれ30社、16社)が拡大(7社、7社)を上回っており、米中対立が在米日系企業による中国への依存を弱めた可能性もある。

(注1)調査実施期間は9月8~30日(日本時間)。調査対象は在米日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資や間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業、日本企業の支店。調査対象は1,841社、有効回答数は787社(有効回答率42.7%)。調査は原則として年1回実施しており、米国では1981年以降これが41回目。

(注2)他の地域を含む調査結果は、2022年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)を参照。

(葛西泰介)

(米国、日本、中国、メキシコ)

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