人工知能などの新興技術を輸出管理の対象に追加へ

(タイ)

バンコク発

2023年01月16日

タイ商務省外国貿易局(DFT)は1月9日、昨今の急速な技術開発の進展に合わせて、2019年タイ大量破壊兵器管理法(TCWMD法、2022年5月17日付地域・分析レポート参照)に基づく物品・技術の輸出・移転の管理について、追加的な措置を検討していることを明らかにした。

具体的には、キャッチオール措置(エンドユーザー・コントロール)として知られる2021年12月26日発効の通達に記載されている輸出管理品目リスト(2022年5月27日付地域・分析レポート参照)に、「新興技術」である物品や技術を加えて更新することを検討している。

新興技術の例としては、人工知能(AI)、量子コンピュータ、ブロックチェーン技術、IoT(モノのインターネット)、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、音声アシスト、クラウドコンピューティング、拡張現実(AR)、遺伝子予測、5G(第5世代移動通信システム)などが挙げられる。

こうした新興技術の輸出管理について、タイが参考とする欧州委員会では、通信機器の顔認証は高度な監視技術に利用される可能性があるほか、一般的に自動車産業などで利用されている積層造形技術(AM)/3Dプリント技術は銃やミサイルの製造に利用される恐れがあると、しばしば指摘されている。また、人工知能技術(顔認識、予測分析、音声認識)については、テロリストが輸送、捜索、破壊、攻撃目的で利用する可能性もある。

また、新興技術関連の品目として、国際的には大量破壊兵器拡散に利用される可能性があるものもある。例えば、毒ガス検知用センサー、人間の脳の働きに着想を得たハードウエア、物体・音声・イメージ・圧力認識センサー、高精度3Dプリンター、航空機用極超音速推進技術などが挙げられている。

こうした追加的措置や技術の発展を見据え、DFTは、在タイの自動車産業、教育機関、金融機関などの関連産業に対し、自社製品の最終用途とエンドユーザーの評価に焦点を当てた内部コンプライアンスプログラム(ICP、2022年5月27日付地域・分析レポート参照)の開発を呼びかけた。ICPは、新興技術の効果的な輸出管理を補助する仕組みとして活用することが可能だ。新興技術が大量破壊兵器の拡散に転用されないことを保証し、輸出先から信頼を得られる効果が期待できる。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ)

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