米商工会議所、バイデン政権にFTAによる貿易拡大を要請
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月13日
米国商工会議所は1月12日、米国のビジネスを巡る状況などについて議論する年次イベント「ステート・オブ・アメリカン・ビジネス(State of American Business)2023」をバーチャル形式で開催した。
同会議所のスザンヌ・クラーク会頭兼最高経営責任者(CEO)は講演で「機能する政府」の必要性を訴えた。「今日、(米国)政府が機能していない例があまりにも多い」として、移民やエネルギーの安全保障、移行を巡る問題、透明性と説明責任に欠ける規制などを問題視した。また「米国政府が機能しないと、外国に米国企業を差別するような世界経済のルールを作ることを許してしまう」「貿易に無関心でいると、われわれの経済的潜在性を制限するだけでなく、地政学的な姿勢も脅かす」と危機感を示した。
その上でクラーク会頭は米国政府と議会に対し、党派対立による行き詰まりを避け、「米国の強さのためのアジェンダ」を追求するよう呼びかけた。具体的には(1)インフラの再建、(2)移民制度の改革、(3)クリーンエネルギーを含むエネルギーの国内生産の拡大、(4)世界への関与の強化、(5)米国内の法の支配の強化に取り組むよう求めた。
これらのアジェンダのうち、世界への関与では貿易の拡大を主張した。米国が最後に新規に自由貿易協定(FTA)の相手国を増やしてから10年が経つが、他国はその間に100の協定を米国抜きで結んだと指摘し、「米国は立ち止まっていたら、遅れを取る」と警鐘を鳴らした。直ちに取るべき対策としては、英国とのFTA締結のほか、ケニアをはじめとするアフリカ諸国との2国間協定を挙げた。米国はトランプ前政権下で英国とケニアとそれぞれFTA交渉を始めたが、バイデン政権は両国とFTAとは別の通商枠組みを新たに立ち上げている(2022年4月27日記事、2022年7月15日記事参照)。米国が主導して交渉を進めるインド太平洋経済枠組み(IPEF、2022年12月22日記事参照)については、その立ち上げを評価しつつ、デジタル貿易と市場アクセスに関する強力なルールを伴う野心的な成果が必要との考えを示した。
中国との関係を巡っては「われわれは強く賢明でなければならない」と述べ、政策のバランスを取る必要性を強調した。中国による人権侵害や経済的威圧に対処するため、同盟国と協力し、中国の不公正な貿易慣行に対抗し続ける一方、中国との通商関係が米国経済にもたらす利益を損なうことがないよう、輸出管理などでは的を絞った措置を実施するよう求めた。対中戦略を推進する上では、連邦議会下院が新たに設立した「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」(2023年1月12日記事参照)で超党派の対中政策を練るよう促した。米国商工会議所は1月10日、下院に対し特別委員会の設立を支持する書簡を送付した際、同委員会では米国の安全保障に影響する分野に焦点を当てるよう提言している。
(甲斐野裕之)
(米国)
ビジネス短信 2c1c0a61f5f95c84