CPTPP、マレーシアで利用できない状況続く

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年12月20日

マレーシアは、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)を9月30日に批准し(2022年10月12日記事参照)、協定は11月29日に発効した。しかし同日、ダガンネット(Dagang Net、税関手続きの電子情報システム)が、協定の適用開始を延期する旨の通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをウェブサイトに公開した。同通知によれば、税関がダガンネットなどに対し、協定適用に関する官報が出るまでシステムをアクティベートしないよう要請している(11月28日付EメールPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレー語のみ)。これを背景に、12月中旬現在、CPTPPの運用は開始していない状態だ。日本の事業者がマレーシアに輸出する際、本協定の利用が拒否されたとの例も出ている。

ジェトロが12月16日にダガンネットに確認したところ、システム的な準備は全て完了しているものの、新政権への移行(2022年12月5日記事参照)に伴い手続きを停止しており、協定適用日の発表を待っている状態という。また、12月19日に、上記Eメールを出した税関の担当者にヒアリングしたところ、「現在、システムは利用できない状態にある。官報がいつ出るか見通しを立てることは困難だが、今年も残り少なく、早くても年明けの可能性が高いのではないか」とのコメントがあった。

新政権によるCPTPPの再検討を促す声が拡大

マレーシアではCPTPP発効を目前に控えた11月25日、同協定に反対するグループ〔Gabungan Kedaulatan Negara(GKN)〕が協定への批准撤回を求める書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(マレー語のみ)をアンワル首相に送付した。GKNは、143の市民団体、エコノミスト、複数の個人などから成る。医師会や消費者協会といった57のNGOや、企業の労働組合も書簡を支持している。署名者の中には、アンワル首相の長女であるヌルル・イザ・アンワル元下院議員の名前もあると報じられている。書簡は、前政権が議会解散前に批准を急ぎ議論が尽くされていないとし、新政権はCPTPPの影響を再検討すべきと主張した(12月12日付FMT)。

これに対し、製造業者連盟外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(FMM)、中堅企業コンソーシアム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(MCMTC)、民主主義経済問題研究所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(IDEAS)などは12月上旬にかけて一斉に、CPTPPから脱退すれば経済機会の損失や国際的信頼の失墜につながるとして、これに強い反発を表明している。

12月19日、政府系シンクタンクのマレーシア経済研究所(MIER)のシャンカラン・ナンビア上級研究員は、現状と見通しを聞いたジェトロに対し、「現在、協定の運用ができない状態にあると承知している。上記のほかにも、複数のNGOがCPTPPへの反対を政府に対して表明する計画があるようだ。今年7月にCPTPPの費用便益分析が公表された時(2022年8月2日記事参照)にはこうした反発の声はなかった。今になって反対意見が再燃していることに違和感がある」との見解を示した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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