CPTPP批准で2030年時点のGDPは1.9%増、政府が費用便益分析を公表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年08月02日

マレーシア国際貿易産業省(MITI)は725日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の費用便益分析結果を公表した(「マレーシア経済主要経済セクターに対するCPTPPの潜在的影響に関する費用便益分析PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」参照)。会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が政府の委託を受けて作成した。

この分析によると、CPTPP批准により、2021年から2030年までに累積で565億ドルのGDP増がマレーシアにもたらされ、結果として2030年時点のGDP1.9%押し上げると推計される。さらに中国と英国がCPTPPに新規加盟した場合、この増加率は最大4.2%に上る。対内投資でも、同期間に1,123億ドル分の上乗せ効果が見込まれるという。批准しなければ、国外の資産はマレーシアから他のCPTPP加盟国へ流出するシナリオもあり得ると分析している。

報告書の公表を受け、マレーシア製造業者連盟(FMM)は、CPTPPの速やかな批准を求める声明を発表(7月26日付FMM声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ソー・ティエンライFMM会頭は、CPTPPの発効によって、これまでにマレーシアが自由貿易協定(FTA)を締結していないカナダやメキシコ、ペルーといった米州市場へのアクセスが改善することに期待を示した。他方で、20183月の署名から4年が経過した今、批准がこれ以上遅れることで、輸出企業のマレーシア外への移管や投資先としての魅力低下につながりかねないと警鐘を鳴らしている。例えば、既にCPTPPが発効したベトナムでは、上記米州3カ国向けの輸出は2019年に約3割増加し、対内直接投資でも2019年の同国の投資総額のうち24.2%をCPTPP加盟国が占めたと指摘。新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けたベトナム経済の回復にCPTPPが大きく貢献したと述べた。原署名国以外にも参加に関心を占める国が増える中、これ以上批准が遅れれば、大きな機会損失になると懸念を示している。

マレーシア中小企業協会(SAMENTA)も26日、早期批准を求めるコメントを出した。特に中小企業は非関税障壁の影響を受けやすく、CPTPPのように、非関税障壁の撤廃も含めたハイレベルなルールを規定した複数国間FTAなくしては、公正な競争力が阻害されるとの考えを示した。

アズミン・アリ国際貿易産業相は20223月、第3四半期(79月)までのCPTPP批准を目指すと発言。知的財産関連法や雇用法はCPTPPの規定水準に合致させるべく、改正が進められてきた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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