マレーシアがCPTPPを批准、11月29日に発効

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年10月12日

マレーシア国際貿易産業省(MITI)は10月5日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の批准に内閣が合意し、9月30日に寄託国であるニュージーランドに批准書を提出したと発表した(MITIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。協定に加盟する11カ国中、9番目の批准国として、マレーシアでは11月29日にCPTPPが発効する。

2033年1月までに、CPTPP加盟国に向けたマレーシアの輸出でほぼ全ての関税が撤廃される見込みだ。特に、既存の2国間FTA(自由貿易協定)が存在しなかったカナダとメキシコ向けで、マレーシアからの主要輸出品目である自動車部品、プラスチック製品、医療用手袋、ゴム製品などに、現在課されている15~30%の高関税が即時撤廃される効果は大きいとMITIは指摘している。CPTPP発効を背景に、マレーシアの輸出額は2030年には3,547億ドルに到達し、貿易黒字のGDP比は8.5%に上ると推計される。

加盟国の拡大や投資環境改善に経済界は期待

2018年3月の署名から4年以上が経過していたことから、経済界からは早期の発効を求める声が上がっていた(2022年8月2日記事参照)。CPTPP批准を受けマレーシア製造業者連盟(FMM)は5日、協定発効はマレーシア企業にとってタイムリーで、貿易の回復を後押しするものだとの期待を示した(FMM声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。カナダや中南米への市場アクセスが改善するのみならず、協定への加盟交渉を進める英国と、加盟申請を行った中国や台湾などを念頭に、「一層の拡大が見込まれるCPTPP市場へのアクセスが改善することは、マレーシア企業に確実に利益をもたらす」との見方を示した。マレーシア・米国商工会議所(AMCHAM)も10月6日、協定への加盟は、マレーシアのグローバルバリューチェーンにおける地位を確固たるものにしたと歓迎した(AMCHAM声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。特にマレーシア国内の中小零細企業は、関税を含む貿易障壁の削減を通じて競争力を高めながら、デジタル経済化による恩恵も受けられると指摘した。

世界的にもハイレベルなFTAに加盟したことで、投資先としての魅力が増したことも、CPTPPがマレーシアにもたらす間接的なメリットとして挙げられる。協定加盟に向けて各国内法の改正や整備を進め、CPTPPが要求するルールの水準を充足したことで、投資環境の改善やマレーシアの国際的な信頼性向上につながった側面がある。

10月8日にシンガポールで行われた閣僚級のTPP委員会には、アズミン・アリ国際貿易産業相も批准国としては初めて出席し、他の加盟国による数年来のマレーシアに対する支援に謝意を表した。同時に、今後、域内の経済統合を深化させ、ルールに基づく複数国間貿易体制を活用すべく、CPTPPの目指す目的達成に向けマレーシアも関与を強化することをあらためて表明した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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