米国債の国外保有残高、2021年5月以来の低水準、ドル高是正進む

(米国、日本、中国、英国)

ニューヨーク発

2022年12月20日

米国財務省が12月15日に発表した証券投資統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、10月の外国・地域による米国債保有残高は前月比1,115億ドル減の7兆1,854億ドルと2021年5月以来の低水準にまで落ち込んだ。2022年に入ってからの連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによる金利上昇に相関して、債券価格が下落したことが影響しているとみられる。

国別保有残高では、1位の日本が前月比420億ドル減の1兆782億ドルで、4カ月連続で減少した。2021年11月のピーク時1兆3,286億ドルから約2,500億ドル減少している。2022年9月から10月にかけて、日本政府・日本銀行は急激な円安ドル高是正のためにドル売り円買いの為替介入を実施した際に、保有米国債を売却しその原資とした可能性が複数メディアで報じられており、これが影響した可能性もある。2位の中国は前月比240億ドル減の9,096億ドルで、2カ月連続で減少した。2010年6月以来の水準にまで落ち込んでおり、2021年11月の1兆808億ドルからは2,000億ドル近く減少している。また、3位の英国も前月比248億ドル減の6,385億ドルとなっている。

米国の金利高などによる米国債離れは続いているが、同じく金利高の影響を受けていた各国通貨に対するドル高は落ち着きを取り戻し始めている。米国のインターコンチネンタル取引所(ICE)が算出しているユーロや円など主要通貨に対するドルの相対的な価値を表すドル指数をみると、2022年10月には約20年ぶりの高値となる110~115付近まで上昇したが(2022年10月4日記事参照)、現在(12月19日時点)は104付近まで低下している。これは、米国の消費者物価の伸びが5カ月連続で鈍化するなどピークアウトの兆しを示しはじめ(2022年12月14日記事参照)、FRBの金融引き締めによる最終的な到達金利の見通しが立ちはじめていることが影響しているとみられる(2022年12月15日記事参照)。

金利見通しの影響は、為替だけでなく社債市場にも落ち着きを取り戻させている。社債市場の逼迫度を示すニューヨーク連邦準備銀行(NYFED)の「社債市場ディストレス指数(CMDI)」によると、CMDIは一時期約2年ぶりの水準にまで悪化したが(2022年7月27日記事参照)、足元の11月は月を通して大きく改善している。NYFEDは「社債市場機能の観点から、(社債)逼迫の兆候は全くない」とコメントしている(ロイター11月6日)。

(宮野慶太)

(米国、日本、中国、英国)

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