米FRB、政策金利を0.5ポイント引き上げ、2023年末に5.1%の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月15日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は121314日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標3.754.0%を0.5ポイント引き上げ、4.254.5%とすることを決定した(添付資料図参照)。これまで4会合連続で通常の3倍となる0.75ポイントの引き上げを行ってきたが、5カ月連続で鈍化した消費者物価指数(CPI)上昇率などを踏まえ(20221214日記事参照)、引き上げ幅を縮小した。今回の決定は参加者12人の全会一致だった。

FRB12月14日に出した声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、前回からほぼ変わらず、唯一「ウクライナ戦争とその関連事象はインフレにさらなる上昇圧力をもたらし」という表現を「戦争とその関連事象はインフレ上昇の圧力に寄与し」と微修正したのみだった。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者19人による中長期見通しも示された。2022年の実質GDP成長率の見通しは0.5%と、前回9月の0.2%から上方改定された一方、2023年の見通しは前回の1.2%から0.5%に下方改定された。2022年のインフレ率(コアCPE)の見通しは4.8%と、前回の4.5%から上方改定され、2023年の見通しについても前回3.1%から3.5%に上方改定されている。他方、2023年末のFF金利の見通しは5.1%と、前回の4.6%から上方改定されている。従って、年明け以降さらに0.75ポイント分の引き上げが想定されているとみられる。引き下げが始まるのは2024年からで、同年末のFF金利は4.1%、2025年末は3.1%を見込んでいる。前回の9月時点と同じく、景気に中立的とされる均衡金利2.5%を上回る水準が長期間続く(添付資料表参照)。

ジェローム・パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、景気の現状について11月の会見時(2022年11月4日記事参照)と同様の評価を述べた上で、2022年と2023年の実質GDP成長率の予測中央値はわずか0.5%となっており、中長期の均衡成長率1.8%を下回る状況が続くことを強調した。また、10月と11月におけるインフレ率の減速について「歓迎すべきこと」としつつ、「物価の持続的低下を確信するには、さらに多くの証拠が必要だ。金融引き締めの効果が物価に現れるまでには、特に時間がかかる」として、金融引き締めの継続を示唆した。インフレの主因となっているサービス価格については「住居費は来年のどこかで減速すると思う。しかし、ほかのサービス価格の減速には、かなりの期間を要するだろう。そのため、われわれはしばらく高い金利を維持しなければいけないと考えている」などと述べた。失業率の見通しが2024年に4.6%となっており、景気の後退を意味するのではないのかとの問いに対しては「プラス成長を実現している限り、景気後退とは言えない。失業率が4.6%というのは、依然として労働市場が強いということだ」と述べる一方、「景気後退が起こるのか、起こった場合どの程度になるかは誰にもわからない」と応じた。

(宮野慶太)

(米国)

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