ドル高は20年ぶりの水準、為替安定策など各国で影響相次ぐ

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月04日

米国のインターコンチネンタル取引所(ICE)が算出している、ユーロや円など主要通貨に対するドルの相対的な価値を表すドル指数は10月3日時点で111ドルを超えて、約20年ぶりの高値を付けている。

このドル指数はユーロ58%、円14%、英ポンド12%などと、通貨ごとに異なる重みづけを行い、平均化して算出される。中国は中央銀行がレートを一定の幅で管理する管理変動相場制を取っており、構成通貨には含まれていないが、現時点で1ドル=約7.1元で推移している。これは約2年ぶりの元安水準となっており、ほぼ全ての通貨に対してドル高が急ピッチで進んでいる状況だ。

ドル高の背景にあるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が高インフレ抑制を目的に急激に金融引き締めを行った結果、政策金利をはじめ米国内の金利が上昇したことで(2022年9月22日記事参照)、ドル需要が高まっていることにあると考えられている。加えて、FRBと同様に各国中央銀行が高インフレ抑制のため金融引き締めを急いでいることから、株式や債券市場が混乱し、流動性確保のため基軸通貨のドルを調達しようとする動きが相次いでいることも、ドル高に一層拍車をかけたといわれている。米国での高インフレはいまだ低下の気配が弱く(2022年9月14日記事参照)、ドル高は輸入品のドル建て価格を抑え、国内の高インフレを抑制させる効果があることなどから、FRBは当面金融引き締めを継続する姿勢を鮮明にしている。

ドル高による各国への影響は既に大きくなっている。IMFによると、新興国・途上国の外貨準備高が2022年1~6月に3,790億ドル分減少したほか(ブルームバーグ8月17日)、ドル建て債務の実質的増加により、対外債務は大きく膨らんでいるとみられている。スリランカに至っては、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー・食料高も影響し、実質的に対外債務不履行となったため、IMFから融資を受ける事態に陥っている(ロイター9月1日)。先進国でも急激に円高が進行していることから、日本政府は約24年ぶりとなる過去最大の2兆8,000億円の為替介入を行った。韓国は2009年3月以来のウォン安となっていることを踏まえ、米韓当局は10月1日、金融不安が悪化した場合などに備え、流動性確保に向け緊密に連携していくことで合意した(セントラルバンキング10月3日)。

英国では、トラス新政権の高インフレ下での財政拡張策の発表により、高インフレがますます進むなどの懸念から、英国債、株式、ポンドのトリプル安が起こり、これが世界的に波及し、市場にはますます混乱が広がっていると指摘されている(ロイター9月6日)。

ドル高は輸入品の価格低下をもたらす半面、米国からの輸出品の価格競争力を低下させるほか、海外で事業を展開するグローバル企業にとってはドル換算の際に収益を圧迫させ得る。また、ドルは世界の基軸通貨であるたけに、急激なドル高は各国の対外収支を悪化させ、財政金融危機を誘発させる恐れも持つ。FRBと米財政当局は、国内のインフレ抑制を進めつつ、金融政策の各国への影響、ひいては世界景気への影響にも考慮しなければいけない局面を迎えている。

(宮野慶太)

(米国)

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