第3四半期の産業別GDP、製造業が前年同期比7.3%増と好調

(メキシコ)

メキシコ発

2022年12月01日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は11月25日、2022年第3四半期の産業分野別実質GDP成長率を発表した。GDP全体では前年同期比4.3%、季節調整済み前期比0.9%となり、10月末に発表された速報値(2022年11月7日記事参照)から前年同期比は変化なし、前期比は0.1ポイント下方修正された。前年同期比成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧林・水産業は3.6%、鉱工業は3.5%、サービス業は4.5%と全てプラス、季節調整済み前期比(添付資料表2参照)でみても、それぞれ2.0%、0.6%、1.1%と成長が持続している。

鉱工業の内訳をみると、製造業が前年同期比で7.3%増と好調で、GDP全体を0.81ポイント押し上げた。製造業のうち輸送機器製造業は同18.7%増となり、2桁成長を記録した。他方、鉱業は前年同期比0.9%減、建設業は同3.2%減、前期比でみてもそれぞれ1.6%減、1.7%減と低迷した。

サービス業では、新型コロナウイルス感染の落ち着きに伴い、前年同期比で卸売業が9.8%増、小売業が5.0%増と好調に推移した。運輸・倉庫業は、製造業の活性化に伴い12.9%増の2桁成長となり、GDPを0.89ポイント押し上げた。ホテル・レストラン業も好調を維持し、第3四半期は前年同期比18.9%増と2桁成長を維持した。ホテル・レストランの1~9月の前年同期比は33.2%増に達し、同期間のGDPを0.53ポイント押し上げている。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日記事2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期以降不振を続けているビジネス支援サービスは、前年同期比で39.7%減と落ち込み幅が縮小したが、前期比でも1.7%減と依然として低迷している。

製造業ではICT・電子機器と自動車部品が好調、ニアショアリングの影響も

製造業の中でも、情報通信技術(ICT)・電子機器製造や自動車部品製造の新型コロナ危機以降の回復が目立つ。製造業付加価値の5%以上を占める主要分野について、各年の1~9月の粗付加価値額(実質値)を2012年1~9月=100として指数化し、過去10年間の推移をみたところ(添付資料の図)、ICT・電子機器製造の2022年1~9月の水準は168.1に達し、新型コロナ前の148.1を20ポイントも上回っている。自動車部品製造は150.6と危機前の155.3には及ばないものの、ほぼ危機前の水準に戻った。完成車製造は2022年も半導体不足の問題に苦しみ、2022年時点でも128.1にとどまり、危機前の140.7の水準に達するには時間がかかりそうだ。

生産が好調な分野では、対米輸出を視野にいれたニアショアリングの観点から、中国などからメキシコへの生産移転の影響(2022年10月31日付地域・分析レポート参照)がみられる。米国国際貿易委員会(USITC)のデータから、2018年と2022年1-9月の米国の輸入額に占める中国製とメキシコ製のシェアをみると、ICT・電子機器では、中国製が2018年の45.3%から2022年1~9月の31.4%へ縮小する一方、メキシコ製のシェアは15.3%から16.2%へ拡大している。同様に米国の自動車部品輸入でみると、メキシコ製が42.0%から43.0%へ拡大する一方、中国製のシェアが13.1%から10.4%へ縮小している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 73a4f7f6c9d75ec4