英政府が金融サービス分野の抜本的改革を発表

(英国)

ロンドン発

2022年12月13日

英国のジェレミー・ハント財務相は12月9日、英国の金融サービス分野の成長と競争力強化を推進するための「エディンバラ改革」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。イングランド銀行(中央銀行)のデジタル通貨(CBDC、2021年4月21日記事参照)に関する意見公募や、不動産投資信託の税制変更、空売りに関する規制改革など、広範囲におよぶ30の取り組みを行い、金融サービス分野の英国の投資と成長を加速させる(詳細は政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

この改革は、リシ・スナク首相が2021年の財務相時代にロンドン市長官邸で演説した英国金融サービス分野のビジョン(2021年7月13日記事参照)を実現するもの。改革では、目論見書(注1)制度の抜本的見直しを通じた上場や資金調達での魅力向上や、当局や企業と協力したホールセール・マーケット(注2)の実証を通じ、上場前の企業の資本アクセス向上などを図る。また、新興技術の活用として、CBDCに関する意見公募を間もなく開始するとしたほか、外国投資の流入促進に向けて暗号資産についても投資運用者免除(注3)の対象とする方針を打ち出した。2023年には金融市場インフラサンドボックスを設立し、企業や規制当局が新たな技術の試験、採択、拡大を行うことができるようにするとした。さらに、サステナブルファイナンスについては、2023年初頭にグリーンファイナンス戦略を発表する予定としたほか、透明性と一貫した基準の使用を確保するため、ESG(環境・社会・ガバナンス)の評価機関を金融規制当局の監督対象とする施策についても意見公募を行うとした。

ハント財務相が11月に発表した秋季経済計画の中では、2023年末までにデジタル技術やグリーン産業、金融サービスなどの高成長産業におけるEU規則の変更を発表する予定としている(2022年11月18日記事参照)。これによって、機動性があり、低コストかつ新たなトレンドに対応した、よりスマートな枠組みを確立できるとした。また、同計画には、EU指令「ソルベンシーII」(注4、2022年5月6日記事参照)に基づいて定めている現行規制について、2023年中の撤廃と改革も含んでいる。国内のインフラなどの資産に対する多額の民間投資を引き出すことが期待されるとした。

(注1)有価証券の販売に際して発行者や証券の情報を説明する文書。

(注2)企業や公的機関、金融機関などが資金調達などを行う市場。

(注3)英国内に投資運用者を任命できる非居住投資家に対する税制優遇策。

(注4)保険業の規制調和を目的としたEU指令。

(島村英莉)

(英国)

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