ハント財務相、秋季経済計画を発表、増税・歳出削減へ

(英国)

ロンドン発

2022年11月18日

英国のジェレミー・ハント財務相は11月17日、議会下院に対し秋季経済計画を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。今回発表した歳出削減と増税による債務の圧縮は550億ポンド(約9兆1,850億円、1ポンド=約167円)に相当する。この発表に合わせて、予算責任局(OBR)も経済・財政見通しを発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ハント財務相は計画について、不況の影響の緩和や、光熱費の削減、長期の高成長、国営医療サービス(NHS)と教育システムの強化につながるものと位置付けた上で、安定性、成長、公共サービスという3つの優先事項を打ち出すとした。

また、英国の経済見通しについて、OBRがインフレ率を2022年に9.1%、2023年に7.4%としていることに触れ、2023年半ばに急激に低下すると紹介。また、OBRは、英国が他国と同様に既に不況に陥っていると判断しているものの、2022年については実質GDP成長率が4.2%となると見通していると述べた。失業率は2024年にピークを迎え、4.9%になるとしている。財政規律については、2027/2028年度までに公的部門(イングランド銀行を除く)の債務の対GDP比を低下させることと、同年度の公的部門の借り入れを対GDP比で3%以下にすることの2つを原則とした。

今回の計画で打ち出した主な施策は以下のとおり(詳細は添付資料表参照)。

  • 上限は引き上げるものの、2023年4月以降も家計向けのエネルギー価格保証を1年間継続、社会給付、年金など支給額のインフレ率に合わせた増額、最低賃金の増額などを含む260億ポンドの支援
  • 石油・ガス企業へのエネルギー利益賦課金の増額や、発電事業者への超過利潤課税などを含む税制変更
  • NHSやソーシャルケア、教育への資金拠出のほか、原子力発電所、鉄道などインフラプロジェクトへのコミット

各省の予算については、2024/2025年度までは既に発表済みの増額分は維持するとしており、2025/2026年度以降の3年間は実質ベースで年間1%の増額に抑えるとしている。国防費は、NATOへのコミットメントに沿うかたちで対GDP比2%を維持するとした一方、ODAについては目標の対国民総所得(GNI)比0.7%の達成は困難とし、0.5%程度となると見込んでいる。

(注)一部施策の詳細については、各ファクトシートも参照(生活費増への対応外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますエネルギー税制外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますビジネスレート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。税制の概要については、ジェトロウェブサイト「税制」も参照。

(山田恭之)

(英国)

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