カナダ政府が重要鉱物戦略を発表、国際共同行動への参加や2国間協力の重要性を強調

(カナダ、日本、米国、欧州、英国、韓国、中国)

米州課

2022年12月15日

カナダ政府は12月9日に重要鉱物戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。カナダ政府の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同戦略は、研究、開発、技術展開のサポートを含む、鉱物の生産、加工、リサイクルに対して、2022年度の連邦予算から最大38億カナダドル(約3,838億円、Cドル、1Cドル=約101円)が拠出される。

同戦略では、目標を達成するために、(1)研究、革新、探査の推進、(2)プロジェクト開発の加速、(3)持続可能なインフラの構築、(4)先住民族との和解の推進、(5)多様な労働力と豊かなコミュニティの育成、(6)グローバルなリーダーシップと安全保障の強化、の6つの重点分野に注力するとしている。

「研究、革新、探査の推進」では、2021年度および2022年度予算において、対象となる重要鉱物に対する30%の探査税額控除の実施のほか、鉱床の特定と評価の改善のための地質探査に7,920万Cドル、カナダの研究所を通じた上流の重要鉱物の研究開発に4,770万Cドル、重要鉱物の研究開発およびバリューチェーンの上流と中流の重要鉱物開発を支援する技術と材料の配置に1億4,440万Cドルを投じる想定となっている。

「グローバルなリーダーシップと安全保障の強化」においては、具体的国名には言及しないものの、非市場的慣行を行っているいくつかの国に重要鉱物生産が集中していることが、サプライチェーンの混乱と鉱物資源価格高騰というリスクになっており、それが地政学的な問題によって一層深刻化していると指摘している。さらに、一部の国が自国内外での資源開発活動において、環境、社会およびガバナンス(ESG)基準の順守をおろそかにしていることから、重要鉱物に関する共同行動を追求することへの関心が主要国際機関などで高まっているとし、そのような場へのカナダの参加が重要だと述べている(注1)。2020年1月以降、カナダが重要鉱物に関する2国・地域間協力協定を米国、EU、日本と締結している点も挙げ、国内に焦点を当てたプログラムや優先事項の実現に妥協することなく、さらに多くの2国間の関係強化を遂行する必要があるとしている(注2)。

重要鉱物に関して、カナダ政府は特に中国への警戒を強めており、2022年10月28日にはカナダ国内の重要鉱物セクターを外国の国有企業による投資から保護するために規定を強化したほか(2022年11月1日記事参照)、11月2日には中国の資源開発企業3社に対しカナダの重要鉱物企業からの投資引き揚げを命じている(2022年11月11日記事参照)。

(注1)カナダ政府は12月12日に、モントリオールで開催中の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の中で、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国、米国とともに、「持続可能な重要鉱物アライアンス」を立ち上げることを発表し、持続可能で包括的な採掘方法の開発や、重要鉱物の調達に向けて環境基準や労働基準の強化について自主的に取り組むことを約束した(2022年12月15日記事参照)。

(注2)戦略ではその他、カナダの許認可が他国に比べて遅く、開発が長期化している状況を踏まえた、「プロジェクト開発の加速」も挙げられている。詳細については、2022年12月15日記事を参照。

(高山さわ)

(カナダ、日本、米国、欧州、英国、韓国、中国)

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