中国政府機関、カナダによる中国企業への投資引き上げ命令に反発

(中国、カナダ)

北京発

2022年11月11日

カナダ政府は11月2日、中国企業3社(注)に対して、カナダの重要鉱物企業からの投資引き上げを命じた。これに対して、中国政府機関が相次いで反発した。

カナダでは10月28日に、中国への警戒の高まりを背景に、同セクターを保護するための規定を強化したガイドラインを発表していた(2022年11月1日記事参照)。

中国外交部は11月3日の記者会見で「鉱物資源のグローバル産業チェーン・サプライチェーンの形成と発展は、市場ルールと企業の選択がともに作用したものだ。カナダが国家の安全という概念を拡大し、人為的に中国とカナダの企業間の正常な経済・貿易・投資の協力に障害を設置することは、自身が掲げる市場経済の原則と国際経済・貿易のルールに背くものだ」と批判した。その上で「中国企業への不当な抑圧をやめ、カナダでの正常な経営活動に公平、公正、無差別のビジネス環境を提供するよう求める。中国政府は引き続き自国企業の正当な合法的権益を断固として守る」とした。

中国商務部は11月6日、外交部同様に、中国企業の活動は市場経済の原則に基づいたものであり、カナダが国家の安全という概念を拡大して障害を設置することに反対した上で「経済・貿易の政治問題化をやめ、中国を含む各国の投資者のために、公平、公正、透明、無差別なビジネス環境を構築すべきだ。中国は必要な措置を取り、中国企業の合法的権益を断固として守る」とした。

新エネルギー車の市場拡大などを受け、中国ではリチウムをはじめ鉱物資源の安定調達の需要が高まっている(2022年5月30日付地域・分析レポート参照)。カナダでは今回の3社のほか、紫金鉱業集団によるネオ・リチウム(Neo Lithium)の買収(2021年10月19日記事参照)など、中国企業による関連企業の買収が行われている。

商務部直属の研究機関の中国WTO研究会の霍建国副会長は「これまで外国政府が中国の投資者に対して審査を行ったり罰則を科したりしたことはあるが、投資引き上げを求めたことはない」(「第一財経」11月3日)と、今回の事態の特殊性を強調した。

商務部研究院国際市場研究所の白明副所長は、今回の措置は国際貿易のルールに背き、米国の対中抑止に同調したものと批判し、中国企業の業績への影響は限定的な一方で、カナダにとっては長期的な影響が大きいとした(「環球時報」11月4日)。

(注)中鉱資源集団の子会社の中鉱(香港)稀有金属資源、盛新鋰能集団の孫会社の盛澤鋰業国際、蔵格鉱業の子会社の蔵格鉱業投資(成都)の3社。中国企業側の公告によると、中鉱(香港)稀有金属資源はパワーメタルズ(Power Metals)について90日以内に、(1)全ての株式の売却、(2)独占販売協議の終了、(3)中国側が任命した役員の退職を求められている。また、盛澤鋰業国際はリチウムチリ(Lithium Chile)、蔵格鉱業投資(成都)はウルトラリチウム(Ultra Lithium)について90日以内に投資(投資プロジェクト内の権利を含む)を放棄し、投資促進のために行っている全ての商業活動を停止するように求められている。公告では、3社いずれも、今回の措置により業績に大きな影響はないとしている。

(河野円洋)

(中国、カナダ)

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