カナダ政府、外国国有企業から重要鉱物セクターを保護するガイドライン強化を発表
(カナダ、中国)
米州課
2022年11月01日
カナダのフランソワフィリップ・シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相とジョナサン・ウィルキンソン天然資源相は10月28日、カナダ国内の重要鉱物セクターに投資しようとする外国の国有企業から同セクターを保護するために規定を強化した最新のガイドラインに関して声明を発表した。カナダ政府が今回の規制強化を定めたのには、中国への強い警戒の高まりがあるとみられる。
声明で両閣僚は、重要鉱物はグリーンなデジタル経済を推進するために不可欠なものであり、その需要の増加と供給の制約がカナダに数世代にもわたって経済的機会をもたらしているとして、「カナダ政府は、気候・環境問題の目標を達成しつつ、機会を捉えるべく取り組んでいる」「だからこそ、カナダは、国内、北米圏、および世界中の志を同じくするパートナーとともに、北米の重要な鉱物サプライチェーンで戦略的な回復力を構築する必要がある」と述べている。
その上で、「その目標を支える外国からの直接投資は引き続き歓迎するが、そうした投資がわが国の安全保障と重要鉱物のサプライチェーンを脅かす場合、カナダは断固として行動する」としている。具体的には、重要鉱物のサプライチェーンが関係するケースでのカナダ投資法適用に関する追加の方針として、10月28日以降、カナダの重要鉱物セクターにおける外国の国有企業による重要な取引は、カナダにとって純利益が見込まれる場合にのみ例外的に承認するとしている。また、外国の国有企業がこうした取引に参加する場合、「取引価格には関係なく、その投資がカナダの国家安全保障に害を及ぼす可能性があるとみるに足る合理的な根拠を成し得る」として、外国国有企業による投資を明確に牽制している。
声明は「本日の指針は、カナダ政府が『重要鉱物戦略』を最終決定していく過程で生まれたもので、同戦略によりカナダは重要鉱物の世界的な供給国として位置づけられる」と締めくくっている。現地報道によると、政府は重要鉱物戦略を2022年内に発表する予定だ(CBCニュース10月28日)。
シャンパーニュ大臣は10月下旬のワシントン訪問中にレモンド米国務長官と会談し、重要鉱物のサプライチェーンに依存する戦略的な産業部門の強化のため、カナダと米国の重要鉱物行動計画の下で協力を強化することで合意したほか、滞在中にカナダのプロジェクトの売り込みを行ったもようだ。同会談の声明で、電気通信ネットワーク分野のサプライチェーン保護における中国排除の動きに関して、カナダが米国などに追随する意向を明確に表明したほか、「カナダが望んでいるのは中国からのデカップリングだ」「人は真に同じ価値観を共有できる者と取引をしたがるものだ」と述べたとされる。
10月11日には、クリスティア・フリーランド副首相兼財務相がワシントンでのイベントで、同盟国や友好国に限定した限定的なサプライチェーンを構築する、いわゆる「フレンドショアリング」(注)の重要性に言及したほか(2022年10月28日記事参照)、メラニー・ジョリー外相が27日に、米国が主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)へのカナダの参加を模索することを表明しており(2022年10月31日記事参照)、カナダ政府の今後の脱中国や友好国との連携の動きが注目される。
(注)同盟国や地域に限定してサプライチェーンを構築すること。米国が対中摩擦の中、敵対国から同盟国へと物資の供給元を切り替えることにより、サプライチェーンの安定化・強化を図ろうとする中で現れた概念。
(高山さわ)
(カナダ、中国)
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