ウクライナ情勢や物価高が新たな経営課題に、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(欧州編)

(欧州、ロシア、ウクライナ)

欧州ロシアCIS課

2022年12月26日

ジェトロは12月23日、「2022年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を発表した。調査は9月1~26日に欧州に進出する日系企業1,445社を対象に実施し、857社から有効回答を得た(有効回答率59.3%)。

2022年に黒字を見込む在欧日系企業は67.1%となり、前年(65.7%)から上昇、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の水準(70.5%)に近づいた。非製造業の黒字の割合は、西欧、中・東欧、英国、EUの全てで製造業を上回った。また、2022年の営業利益見込みが前年比で「改善」とする企業は38.9%で、「悪化」の24.8%を14.1ポイント上回ったものの、40.2ポイント上回った前年調査と比べて「改善」が縮小した。中・東欧の製造業では、物流や調達コストの上昇、燃料費の高騰などを理由に、「悪化」の割合が35.0%となり、「改善」の割合(36.3%)とほぼ同等だった。

ロシアのウクライナ侵攻については、77.0%の企業に「マイナスの影響」を与えた(2022年11月7日記事参照)。経営上の問題点も「ウクライナ情勢」が61.7%と最も多かった。また、「インフレ」(49.9%)を選んだ企業が前年調査から45.4ポイント上昇、新たな課題に急浮上した。ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の高騰などがインフレを加速させ、在欧日系企業の経営の負担増につながっている。

人権デューディリジェンス(DD)を実施する企業は全体の35.4%で、既に人権DD関連法が施行されている英国(46.2%)とフランス(42.9%)で高い割合となった。人権DDを実施している企業のうち、8割が調達先への方針準拠を求めている。人権DDの取り組み上の課題(複数回答)として、6割の企業が「人権に関する内容理解」と回答した。

脱炭素化に取り組む企業は6割、前年から大幅上昇

脱炭素化(温室効果ガス排出削減)に既に取り組んでいる企業は59.6%と、前年調査(40.7%)から18.9ポイント上昇した。全ての国で5割以上の企業が「既に取り組んでいる」と回答した。脱炭素化の取り組み上の課題(自由記述)として、EU排出量取引制度(EU ETS、2022年12月20日記事参照)の動向、炭素国境調整メカニズム(CBAM、2022年12月14日記事参照)や企業持続可能性報告指令(CSRD、2022年12月1日記事参照)への対応など、法規制への対応の難しさが挙げられた。

(山根夏実)

(欧州、ロシア、ウクライナ)

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