企業持続可能性報告指令が2024会計年度から適用へ

(EU)

海外調査部

2022年12月01日

EU理事会(閣僚理事会)は2022年11月28日、企業持続可能性報告指令(CSRD)案(2021年4月23日記事参照)を最終承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EU理事会と欧州議会は同年6月21日に暫定的な政治合意に達し(2022年6月24日記事参照)、欧州議会は11月10日に最終承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。

CSRDは、EUの持続可能な経済への移行にもはや適合しなくなった、2014年の非財務情報開示指令(NFRD)により会計指令に導入された非財務報告に関する既存の規則を強化する。CSRDは、大企業と上場した中小企業に対し、環境権、社会権、人権、ガバナンス要因などの持続可能性事項に関する報告を義務付けるもので、より詳細な報告要件を導入する。

新しい持続可能性報告ルールは、全ての大企業(注1)とEU域内で上場している零細企業(注2)を除く全ての企業に適用される。対象企業は、子会社に適用される情報評価に対しても責任を求められる。CSRDは上場した中小企業にも適用されるが、2028年までは移行期間として適用免除が可能となった。

欧州域外企業については、EU域内での純売上高が1億5,000億ユーロ超で、EU域内に特定の閾値(注3)を超える、少なくとも1つの子会社もしくは支店がある場合に適用される。対象企業は、CSRDで定義されているように、環境・社会・ガバナンス(ESG)の影響に関する報告を提供することが求められる。

CSRDの適用は次の4段階で行われる。

  • 既にNFRDの対象となっている従業員500人超の上場企業や銀行などは2024会計年度から適用となり、その報告を2025年から行う。
  • NFRDの対象でない大企業は2025会計年度からの適用となり、その報告を2026年から行う。
  • 上場した零細企業を除く中小企業や、小規模かつ複雑でない信用機関、およびキャプティブ保険会社は2026会計年度からの適用となり、その報告を2027年から行う。
  • EU域内に特定の閾値を超える、少なくとも1つの子会社か支店があり、EU域内での純売上高が1億5,000万ユーロを超えるEU域外企業は2028会計年度から適用となり、その報告を2029年から行う。

CSRDは、欧州議会議長とEU理事会議長の署名を経て、EU官報掲載から20日後に発効する。加盟国は発効から18カ月以内に国内法制化することを義務付けられる。

EFRAGが欧州持続可能性報告基準の最終案を承認

なお、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は2022年11月15日、CSRDの下で企業が環境や人権などのサステナビリティー(持続可能性)関連事項に与える影響や、サステナビリティー関連事項が企業に与える影響、開示情報を特定したプロセスなどについて、より詳細な報告要件を定めた欧州持続可能性報告基準(ESRS)の最終案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを承認した。欧州委員会は、EU加盟国および多くの欧州機関との協議の後、委任法としてESRSの最終版を採択する予定。

(注1)(1)総資産残高2,000万ユーロ超、(2)純売上高4,000万ユーロ超、(2)従業員数250人超、のうち、2つ以上の条件を満たす企業。

(注2)(1)純資産残高35万ユーロ、(2)純売上高70万ユーロ、(3)従業員数10人、のうち、2つ以上の条件を超えない企業。

(注3)EU子会社が大企業、もしくはEU域内上場企業(零細企業を除く)に該当するか、EU支店がEU域内において純売上高4,000万ユーロ超であること。

(田中晋)

(EU)

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