第3四半期のGDP成長率は前期比0.6%、4四半期連続のプラス成長

(オーストラリア)

シドニー発

2022年12月22日

オーストラリア統計局(ABS)は12月7日、2022年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率が前期比0.6%だったと発表した(添付資料表1参照)。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大の影響を受けた2021年第3四半期を底に、同年第4四半期(10~12月)以降、4四半期連続でプラス成長となった(2022年9月26日記事参照)。また、前年同期比では5.9%成長した。ABSの発表によると、今四半期のプラス成長の要因は主に個人消費の増加によるものだった。

需要項目別の実質GDPを前期比でみると、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)による影響が緩和され、旅行関連や自動車の個人消費が伸びたことから、民間最終消費支出は1.1%増となった。財・サービスの輸出は2.7%増で、2四半期連続でのプラス成長だった。輸出の増加は主にサービスの輸出が大きく伸びたことによる。外国人留学生や観光客がオーストラリアに戻り、教育や旅行サービス関連の輸出が増加した。財の輸出は、羊毛や綿などの農産物、鉱石の輸出が増加した。一方、財・サービスの輸入は3.9%増だった。財の輸入については、燃料や自動車、通信機器が増加した。サービス輸入の増加は新型コロナ関連の制限撤廃に伴い、オーストラリア人による海外旅行サービス関連の支出が大きく伸びたことが影響した。

産業別にみると、サービス業が好調だ。旅行や外食需要の増加により、運輸・郵便・倉庫業(前期比3.5%増)、宿泊・飲食サービス業(3.4%増)が伸びた。コンサルティング・会計など専門的なサービスへの需要が継続しており、専門・科学技術サービス業(1.6%増)も増加した。資材などの供給不足の緩和や、交通インフラやエネルギー分野の新規プロジェクトの建設工事の開始、商業用・住居用ビル建設の増加を背景に、建設業(2.3%増)も伸びた。主要産業の鉱業は1.2%増加した。生産の回復や新たな鉱山開発による供給増加によって鉄鉱石(3.0%増)は増加したが、石炭は東海岸の大雨による洪水の発生が生産活動に影響し、0.2%減少した。また、石油・ガスもメンテナンスによる生産の中断で3.3%減少した(添付資料表2参照)。

ジム・チャルマーズ財務相は、ロシアのウクライナ侵攻の影響によるエネルギー・資源価格の高騰や、中国での新型コロナ感染再拡大、予測できない国内天候不順など不確実性が高まる情勢の中でも、「オーストラリア経済は着実に成長を遂げている」とコメントした。しかし、「同時に、国民や企業に対して複合的で相当の圧力がかかっている」とも述べ、今後の経済の見通しで不確実性が影響を及ぼすことは避けられないと警戒感を示した。その上で、同財務相は「10月に発表した連邦政府予算案(注)で、国民の生活費軽減のための支援、より強固で新しい経済に向けた投資、政府支出抑制策を打ち出した」と説明した。

(注)2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)連邦政府予算案について、詳細は2022年11月28日記事2022年12月2日記事参照

(青島春枝)

(オーストラリア)

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