2022/2023年度予算案、脱炭素化を見据えた措置も盛り込む

(オーストラリア)

シドニー発

2022年12月02日

オーストラリア連邦政府が10月25日に発表した2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)予算案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2022年11月28日記事参照)のうち、エネルギーに関しては、アルバニージー政権の新しいエネルギー政策「Powering Australia」を踏まえた施策が盛り込まれた。アルバニージー政権は、同政策により、雇用の創出、電気料金の削減、再生可能エネルギーの普及促進および温室効果ガス排出量削減を目標にしている。予算案のうち、脱炭素・カーボンニュートラルに関連した主な施策は以下のとおり。

  • 国家送電網再整備計画(Rewiring the Nation)として、今後複数年度にわたり200億オーストラリア・ドル(約1兆9,000億円、豪ドル、1豪ドル=約95円)の資金を通じて、再生可能エネルギーの活用、送電網の安全性の改善、電力料金の引き下げを目的に、国内送電網の更新や拡大を緊急で実施する。
  • 19億豪ドルの地域振興基金(Powering the Regions Fund)を設立し、基金を通じてオーストラリア国内産業の脱炭素化、新エネルギー産業の促進、新エネルギーに携わる労働力の増加へ支援を実施する。
  • 新エネルギー産業での投資拡大や雇用の創出を目的として、クイーンズランド州のタウンズビルでのグリーン水素拠点の設立に対して、今年度から7年間で7,190万豪ドルを拠出する。
  • 電気料金の削減を目的に、全国400カ所(約10万世帯を対象)で実施する太陽光発電によるコミュニティバッテリー(注1)設置支援のプログラムに、今年度から4年間で2億2,430万豪ドルを拠出する。また、2万5,000世帯に低価格の太陽光発電エネルギーを供給するコミュニティソーラーバングプログラムに、今年度から4年間で1億220万豪ドルを拠出する。
  • 交通部門の温室効果ガス排出量の削減と気候変動対策として、国家交通基金(Driving the Nation Fund)を設立し、今年度から6年間にわたり2億7,540万ドルの資金を拠出する。例えば、オーストラリアで最も往来の多い貨物ルートにおける水素燃料補給ステーションの設置、また、国内の国道において117カ所の急速充電ステーションの設置を支援する。
  • EV購入支援策として、電気自動車、水素燃料電池車、プラグインハイブリッド車に対する税金〔フリンジベネフィット税(注2)や輸入関税〕について、一定の条件のもとで免除する。

(注1)コミュニティバッテリーとは、地域内で太陽光により発電した電力を地域単位で蓄えて共有できる電源を設置することで、電力コストを抑えるもの。また、コミュニティソーラーバンクとは、地域で実施する中規模太陽光発電プロジェクトの株式を住民が購入し、株式の持ち分に応じて、プロジェクトで発電したエネルギーを利用する権利を受け取るもの。各世帯が自宅に太陽光パネルを設置せずに、太陽光エネルギーを利用できる。

(注2)雇用主が従業員に支給するベネフィットに対して、雇用主が支払う税金(2021年2月26日調査レポート参照)。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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