2022年は外貨準備高減少、物価上昇がビジネスの重しに

(エジプト)

カイロ発

2022年12月27日

2022年のエジプト経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を大きく受けた。外国投資の流出や物価の急騰といった課題を抱える中、インフレ率の抑制を目的にエジプト中央銀行(CBE)は4度にわたって利上げを実施した(2022年12月26日記事参照)。円建て国債(サムライ債)の発行や、湾岸協力会議(GCC)諸国からの出資、IMFによる30億ドルの追加融資など、通貨危機を防ぐための財政支援が相次いで実施された。一方で、世界銀行によると、外貨準備高は2022年2月末の545億ドルから11月末時点で386億ドルまで減少した。

日本企業は、CBEが3月に導入した輸入取引に信用状(L/C)決済の使用を義務付ける規制に悩まされた(2022年6月24日記事参照)。同規制は10月の臨時政策決定会合で12月までに順次撤廃すると発表されたが(2022年10月28日記事参照)、いまだ大きな変化は見られない。

政府の当面の課題はインフレ率の抑制だ。エジプトは世界最大の小麦輸入国で、ロシアやウクライナからの調達に依存していた。貧困層対策として、補助金を使用して小麦やパンを低価格で市場に供給していたが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で小麦価格が高騰し、貿易赤字と政府の財政負担を拡大させた。世界的な物価上昇や輸入品価格の上昇が続く中、CBEによると、11月の都市部の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比18.7%に達した。エジプト・ポンドは年初1ドル=15.7ポンドだったが、2度の実質切り下げを経て(2022年3月25日記事10月28日記事参照)、12月25日現在1ドル=24.7ポンドまで通貨安が進んでいる。

政府は各国首脳や国際機関との会談を重ね、支援を求める一方、外国企業の投資誘致に力を入れた。アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は10月、企業の許認可手続きを加速する「ゴールデンライセンス」を活用すると言明した(2022年11月4日記事参照)。12月には住友電工と矢崎総業の2件を含む製造業8案件に対してゴールデンライセンスが授与された。

(福山豊和)

(エジプト)

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