モロッコの課題やビジネスチャンスを紹介、ジェトロがウェビナー開催

(アフリカ、モロッコ、日本)

中東アフリカ課

2022年12月14日

ジェトロは128日、「成長の続くモロッコの現状とビジネスチャンス」と題したウェビナーを開催した。ジェトロ・ラバト事務所の本田雅英所長が登壇し、モロッコ経済の今と今後の展望や成長に向けた課題、モロッコでビジネスを展開する上での魅力などについて講演した。

モロッコの2021年の経済は新型コロナ禍からの回復を見せたが、2022年は農業分野などの不振により停滞する見通しだ。サハラ砂漠のイメージが強いモロッコだが、北部には農地が広がり、農業生産物を加工して輸出も行っている。GDPに占める農業の比率が高く、経済成長率が天候に大きく左右されるという特徴がある。

スペインの対岸に位置するモロッコのタンジェには、アフリカ最大級のコンテナ港がある。欧州などへの輸出が容易なだけでなく、鉄道や高速道路などのインフラも充実しているため、国内にある自由貿易ゾーンからのアクセスも良い(2022615日記事参照)。中東や欧米など多くの国と自由貿易協定(FTA)を締結しているのもモロッコの魅力の1つだ。2022418日にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定も批准した(2022524日記事参照)。AfCFTAが進展すれば、アフリカ域内での貿易もさらに自由に行えるため、生産拠点としても注目を集めている。

また、他の北アフリカの国とは異なって石油や天然ガスをほとんど産出していないのもモロッコの特徴の1つだ。そのため、水力や風力、太陽光を柱に再生可能エネルギーの開発や活用に熱心に取り組んできた(2022119日付地域・分析レポート参照)。モロッコの南方に位置するワルザザードには、巨大なNOOR太陽光発電複合施設がある。グリーン水素やグリーンアンモニアの分野でも、産学官連携や国際連携が進んでいる。

本田所長はこれらの説明に続けて、さまざまな分野に存在している日本企業のビジネスチャンスについて述べた。例えば、自動車や航空機産業などの製造分野では、FTA網が充実しているため、製造拠点としての強みがある。農業分野では、降雨に恵まれない年でも農業生産を高められる技術を導入しようという動きがあり、また、モロッコ政府は海水の淡水化施設を建設するなど水不足対策に取り組んでいる。農業資機材、淡水化や水処理の分野でも、日本企業の参入に期待が寄せられている。モロッコの人口規模は大きくないが、1人当たりGDP3,000ドル台で、アジア諸国ではベトナムと並ぶ。カサブランカのような大都市では、欧州レベルの生活様式や所得水準の人口も多く、高機能製品の需要もあるため、日本食など高級消費材などにも商機があるだろう。

ジェトロは、モロッコのこうした商機の拡大を踏まえ、モロッコ・グリーンビジネスミッションの派遣日・モロッコビジネスフォーラムの開催を予定している。

(平岡優)

(アフリカ、モロッコ、日本)

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