政府、エネルギー価格上限の大企業への適用を決定
(チェコ)
プラハ発
2022年12月16日
チェコ内閣は12月14日、大企業を対象に2023年1月以降エネルギー価格の上限を定める政令を可決した(同日付プレスリリース)。世帯・中小企業には、10月5日に上限価格設定措置を発表済み(2022年10月7日記事参照)だが、大企業に対しては、全予算額300億コルナ(約1,800億円、1コルナ=約6円)の補助金プログラム(2022年11月8日記事参照)は施行開始したものの、上限価格制度は導入してこなかった。
前述のプレスリリースと産業貿易省の同日付発表によると、大企業向けの上限価格制度の概要は以下のとおり。
- 上限価格は中小企業向けと同様、電気1メガワット時(MWh)当たり5,000コルナ、ガス同2,500コルナ(VAT、送電網と送導網の使用料は含まず)
- 上限価格は過去5年間の最大月間消費量の80%に対して適用
- 施行期間:2023年1月1日~12月31日
- 補助金プログラムと併用可。ただし、1企業当たりの国家補助額上限は400万ユーロ。
- 制度適用を受けるには、企業がエネルギー事業者に対して申請書を提出する必要がある。
ヨゼフ・スィーケラ産業貿易相は、電気とガスともに80%の条件を設定したことについて、「企業の省エネ意識の喚起を目的としたもの」と説明している。
また、ズビニェック・スタニュラ財務相は、1企業当たりの国家補助額の上限に言及し、「上限額はEU加盟国どこでも同額(注1)。(今回の大企業向け価格上限を設定することで)競争力の面でチェコ企業が不利になるリスクは取り除かれた」と述べた。
産業貿易省は今回の上限価格設定に対する予算総額を約400億コルナと見積もっている。
企業団体は上限価格の大企業への適用を歓迎している。産業連盟のヤン・ラファイ副会長は14日、「この支援は、企業が来年の計画を立てる上で少なくとも一定の確実性をもたらす基盤と認識している」とした上で、今後もエネルギー価格高騰の影響が特に大きい企業を対象とした補助的な支援プログラムの導入、あるいは短時間労働制度(注2)の発動なども検討する必要があると述べた。
(注1)欧州委員会が10月28日に採択した国家補助に関する暫定危機対応枠組みの改正案(2022年11月1日記事参照)で、1企業当たりの国家補助額上限が400万ユーロと定められていることを指すと思われる。
(注2)2021年7月1日に導入された、経済危機や自然災害などで企業が雇用を維持することが困難になった際に適用される制度(Kurzarbeit)。発動は政府が決定する(2021年7月2日記事参照)。
(中川圭子)
(チェコ)
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