欧州委、リパワーEU計画の一環で再エネ施設整備を加速させる暫定規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年11月17日

欧州委員会は119日、再生可能エネルギーの整備を加速させるための暫定緊急規則案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この規則案は、特定の再エネ技術あるいは再エネプロジェクトを対象に、迅速な整備に向けて許可手続きの簡略化を即座に実施するための暫定措置を規定するもの。

欧州委は、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア産化石燃料からの脱却計画「リパワーEU」(2022年9月1日地域分析レポート参照)を発表し、(1)省エネの推進、(2)エネルギー供給の多角化、(3)再エネ推進の加速を掲げている。同計画に基づき、(1)では、ガス需要削減規則(2022年8月9日記事参照)や電力需要削減規則(2022年10月3日記事参照)を成立させたほか、(2)では、液化天然ガス(LNG)の追加供給で米国(2022年3月28日記事参照)やアゼルバイジャン(2022年7月20日記事参照)などと合意している。(3)に関しては、欧州委は、EU全体での最終エネルギー消費ベースのエネルギーミックスに占める再エネ比率の目標を定める再エネ指令の改正案を発表。再エネ比率目標の引き上げとともに、再エネ施設の整備における許可手続きの簡略化を提案しているが、EU理事会(閣僚理事会)(2022年7月4日記事参照)と欧州議会(2022年9月26日記事参照)による協議が続いており、現時点では採択されていない。そこで今回、欧州委は、再エネ施設の整備を即座に加速させるために、再エネ指令の改正および適用開始までの暫定措置として、再エネ指令の許可手続きの簡略化の部分に限定した規則案を提案した。

今回の規則案は、再エネ施設の整備を優先すべき公共の利益とみなすことで、環境影響評価の一部免除など許可手続きの簡略化や関係当局による審査期間の短縮などを即座に実施する。対象となるのは、太陽光発電、既存の再エネ施設、ヒートポンプだ。

太陽光発電に関しては、迅速な設置が可能な再エネ技術として、建物の屋上や駐車場などの人工物の上に太陽光パネルを設置する場合には、環境影響評価を免除するとともに、許可手続きの審査期間を最長1カ月とする。また、発電容量が50キロワット以下の小規模施設についても、関係当局からの回答が申請から1カ月以内にない場合には、設置が許可されたとみなす。

既存の再エネ施設に関しては、現在の発電容量の維持や増強のための整備に必要な許可手続きを簡略化し、環境影響評価の審査対象を現行施設からの変更部分に限定するほか、環境影響評価を含めた審査期間を最長6カ月とする。欧州委は、念頭にある既存の再エネ施設の一例として陸上風力発電施設を挙げている。EUでは、20212025年に風力発電の現在の発電容量の約4分の1に相当する施設が通常の運用年数である20年を迎えることから、発電容量を維持するために効率の良いタービンに交換する必要があるとしている。

ヒートポンプについては、冷暖房への活用によりガス需要を抑えることができるとして、許可手続きの審査期間を最長3カ月とする。

この規則案は今後、EU理事会により審議され、採択されれば、EU官報への掲載翌日から施行され、1年間適用される。

(吉沼啓介)

(EU)

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