現地従業員の定年退職時や駐在員再雇用時の留意点、ジェトロがセミナー開催

(中国、日本)

広州発

2022年11月30日

ジェトロは11月10日、現地従業員の定年退職時や日本人駐在員(定年退職後)の現地再雇用の留意点について、現地進出日系企業を主な対象としたオンラインセミナーを開催した。近年、定年退職を迎える現地従業員が増加傾向にある中で、定年退職時にトラブルに発展するケースが出てきている。

講師を務めた青葉顧問(広州)の田倩マネジャーは「特に女性の定年退職に関する労務紛争が多く、留意が必要」と述べた。1978年公布の「高齢・虚弱・病気・障害のある幹部の安定的な配置に関する暫定弁法」と「労働者の定年退職、 離職に関する暫定弁法」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、女性の定年退職年齢について「労働者は満50歳、管理職や技術職は満55歳」と定めている。しかし、女性従業員が定年退職年齢に達した際に、当該従業員が労働者なのか管理職かの定義が労働契約書上で明確になっていないケースが散見されるという。田マネジャーはこの問題への対応策として、以下の3点をアドバイスした。

  1. 従業員との労働契約、特に(定年退職までに)最後に更新する労働契約書で、役職の名称と性質を明確にし、「管理職」や「技術職」かどうかを明記する。
  2. 「従業員規則」またはその他の社内制度の中で、社内組織図の各役職に対して「管理職」や「技術職」 かどうかを定義する。
  3. 必要に応じて書面で取締役議事録、株主総会議事録を作成し、特定の役職に対して、「管理職」や「技術職」かどうかを明確にする。

また、田マネジャーは、日本人の定年退職後の現地再雇用の留意点ついて、再雇用時の契約で「労働契約」(注1)、「労務契約」(注2)のいずれかを明確にすべきと指摘した。田マネジャーによると、「労働契約」の場合、契約解除に当たっては「労働契約法」が定める要件や手続きに従う必要が生じる。あいまいなかたちで契約を締結すると、従業員が訴訟などを起こした場合、たとえ企業側が「労務契約」と主張したとしても、裁判所は「労働契約」と認定する可能性がある。同時に、田マネジャーは「日本人の定年退職者の現地再雇用に当たっては、就労許可取得の年齢制限に留意すべき」とも指摘した。

なお、中国国家外国専門家局は2016年9月27日、「外国人来中工作許可制度試験実施法案の通知」(外専発[2016]151号)を公布、外国人就労者をハイレベル人材(A類)、専門人材(B類)、一般人員(C類)に分類している。B類、C類の認定は、原則として60歳未満が条件となっている(2016年12月8日記事2016年12月9日記事2016年12月26日記事参照)。

(注1)労働契約とは、労働者と雇用主の間で労働(雇用)関係を締結し、双方の権利義務を明確にするための協議を指す。

(注2)労務契約とは、各当事者の平等協商によって、ある特定の労務や労務成果に関して合意した協議を指す。

(注3)今回のセミナーの講演資料はこちらPDFファイル(0.0B)から参照可能。

(朱冬青)

(中国、日本)

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