EU理事会、COP27に向けたEUの立場承認、締約国に排出目標のさらなる強化求める

(EU)

ブリュッセル発

2022年10月26日

EU理事会(閣僚理事会)は10月24日、環境相理事会を開催し、11月にエジプトで開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に向けたEUの交渉上の立場PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を承認した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU理事会は10月20~21日の欧州理事会(EU首脳会議)での総括を受け(2022年10月24日記事参照)、気温上昇は産業革命前と比較して1.5度以内に抑えるというパリ協定の目標の実現可能性を維持するためには、世界全体での取り組みを大幅に加速させる必要があると強調。全ての条約締約国の現行の国別排出目標(国が決定する貢献:NDC)を合計しても、1.5度以内という目標達成には不十分として、全ての条約締約国に対して、より野心的な目標や政策を掲げるよう求める方針だ。特に主要経済国に対しては、COP27までにNDCを強化するよう求めた。EUおよび加盟国のNDCに関しては、2030年までの温室効果ガス(GHG)排出量の55%削減(1990年比)に向けた政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)の主要部分(2021年7月20日記事参照)が採択され次第、NDCに反映させる予定としている。

このほか、2021年のCOP26で焦点となった石炭火力発電に関しては、COP26で合意された(2021年11月16日記事参照)、対策がされていない石炭火力発電の段階的な削減と、非効率な化石燃料への補助金の廃止を全ての条約締約国に求めるにとどめた。2020年までに先進国が開発途上国へ年間1,000億ドルを共同で動員するという目標については、あらためて達成に向けた意欲を示すとともに、2023年には達成できるとの予想を示した。

COP27には、今回承認されたEU理事会の立場に基づき、欧州委員会がEUを代表して交渉に参加する。

欧州議会はより野心的な取り組み要求

欧州議会は今回承認されたEU理事会の立場よりさらに野心的な立場を表明している。欧州議会が10月20日に採択した決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EU理事会と欧州議会が現在協議中の「Fit for 55」の主要部分に関して、EU理事会に対して、欧州議会の立場(2022年9月26日記事参照)を受け入れるよう求めている。欧州委はロシアによるウクライナ侵攻を受けて提案したロシア産化石燃料からの脱却計画「リパワーEU」で、「Fit for 55」の主要部分の数値目標の引き上げを提案(2022年5月20日記事参照)。欧州議会は引き上げを支持する立場を採択した一方で、EU理事会は欧州委が「Fit for 55」で当初提案した数値目標には合意したものの、引き上げについては未定としている(2022年7月4日記事参照)。欧州議会は、COP26に前後して各国が表明したより野心的な目標が完全に実施されたとしても、気温上昇は目標より大幅に高い2.7度になると予測する国連環境計画(UNEP)の報告書を引用して、数値目標の引き上げの必要性を強調している。

また、COP27で焦点の1つになるとみられる気候変動への「適応」と、適応できる範囲を超えた「損失と損害」への対応に関して、欧州議会は「損失と損害」への対応策として、無償援助を重視したかたちで、十分かつ追加的な公的資金の提供で合意するように求めている。一方で、EU理事会は最も脆弱(ぜいじゃく)な国への具体的な解決策の提供に向けて、官民での資金提供を重視するとともに、「損失と損害」への対応に関する協議の継続を支持すると述べるにとどめた。

(吉沼啓介)

(EU)

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