進出中国企業によるEUのビジネス環境評価は3年連続低下、経済安全保障法制による影響も懸念

(中国、EU)

中国北アジア課

2022年10月11日

在EU中国商会(CCCEU、注1)は9月30日、年次報告書(2022年版)を発表した(注2)。報告書は、在EU進出中国企業に対して2022年6~7月に実施したアンケート調査(有効回答数125社)の結果(注3)を示した。

調査結果では、中国企業がEUでのビジネスに積極的に取り組む姿勢が表れた一方で、EUで昨今、法制化が進む経済安全保障関連制度による影響への懸念も示された。主な内容は以下のとおり。

〇自社の世界戦略でのEUの重要性:「高まる」との回答割合が8割。

「EU市場において自社が最も重要視する点」については、「EUでのプレゼンスによる自社およびブランドの世界的なイメージ向上への寄与」との回答が68%に上ったほか、「製品やサービスの販売ターゲット先としての位置づけ」が54%、「EUのサプライチェーン、製造能力、技術革新力と中国企業(の強み)との補完による競争力強化」が46%と続いた。

〇EUでの今後1年間の投資計画:「既に計画済み」との回答が23%、「投資を行う可能性を排除しない」は55%と、両回答の合計で約8割を占めた。

〇EUのビジネス環境に対する評価点:65点と3年連続で低下した(2019年73点、2020年70点、2021年68点)。

同評価点の内訳となる項目で前年から評価点が下がったのは、「経済・産業環境」(62点、前年から8ポイント低下)、「政治環境」(50点、同5ポイント低下)、「ビジネスサービス環境」(58点、同2ポイント低下)の3項目だった。

「政治環境」に関しては、回答者のうち38%が、「政治環境によって自社のビジネス運営がマイナスの影響を受けた」と回答した。

外国政府の補助金受けた企業に対処する規則案に、96%が影響懸念

経済安全保障関連制度(および案)による影響を聞いた設問では、「EU域内市場に歪曲(わいきょく」的な効果を及ぼす外国補助金(域外国政府による資金的貢献)に対処する規則案」に対し、「マイナスの影響を懸念する」とした企業が96%と高い割合を示した(前年調査:97%)。この規則案は、2022年6月30日にEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が暫定的な政治合意に達したと発表した(2021年5月6日記事2022年7月11日記事参照)。このほか、2020年10月施行の「対内直接投資審査規則」(2020年10月13日記事参照)には、「マイナスの影響を懸念」との回答が27%(前年から7ポイント上昇)。欧州委員会が2022年2月23日に発表した「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」(2022年2月28日記事参照)に対する同回答は35%(3ポイント上昇)。2022年8月29日施行の「国際調達措置規則」(2021年6月10日記事参照)には、「深刻なマイナスの影響を予想」が5%、「わずかにマイナスの影響を予想」が35%となった。

(注1)CCCEUは、The China Chamber of Commerce to the EU の略称。中国企業のEUでのビジネス促進や、ビジネス環境改善などを目的として、2018年にベルギーのブリュッセルで設立。会員企業は75社(2022年9月時点)。

(注2)ドイツを本拠地とする大手コンサルティング会社ローランド・ベルガーとの共同発表。同報告書は2019年から毎年公表されている。

(注3)アンケート調査のほか、中国企業や関係機関20社・団体に対してヒアリング調査を実施したとしている。

(小林伶)

(中国、EU)

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