バイデン米大統領、中間選挙後の筆頭課題に中絶権の法制化

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月20日

米国のジョー・バイデン大統領は1018日、首都ワシントンでの演説で、118日に行われる中間選挙を経て民主党が連邦議会上下両院の議席数を伸ばせば、人工中絶権を認める法案を新議会(注1)で提出する最初の法案にするとの方針を掲げた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

人工中絶権については、最高裁判所が6月に、中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄したことを受けて、中間選挙に向けた重要な政治課題になっている(2022年6月27日記事参照)。その後、共和党が知事職と州議会を占める保守的な州では、中絶を禁止または制限する州法が成立しており、産業界を巻き込んだ議論に発展している。例えば、映画産業に力を入れるジョージア州では7月に、医師が胎児の心臓の拍動を確認できる妊娠約6週目以降の中絶を禁じる州法が成立した(2022年7月22日記事参照)。これに対して、映画産業が盛んなカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は同産業関係者に対し、ジョージア州など厳格な中絶禁止法を設けている州からの撮影の引き揚げとカリフォルニア州への回帰を呼び掛ける動きを取った(2022年8月5日記事参照)。同様の州法を成立させたインディアナ州でも、同州に本社を置く医薬品大手イーライリリーが、州外での雇用拡大を計画せざるを得ないとの懸念を表明するといった動きが出ている(2022年8月12日記事参照)。

こうした議論もあり、直近の世論調査では、有権者が重要と位置付ける問題として「中絶」が「経済」「インフレ/生活費」に続く位置を占めるものもある(2022年10月18日記事参照)。バイデン大統領は演説の中で、現時点の上下両院の議席数(注2)では中絶権を認める法案を可決することは難しい点を認めた上で、有権者に対して「選択する権利を重視するのであれば投票するのだ。だからこそ中間選挙では、上院と下院により多くの民主党議員を選出することが重要なのだ」と訴えかけた。続けて、それが実現すれば、「私が新議会へ最初に提出する法案はロー対ウェイド判決を法制化するものだ。議会が可決すれば1月に署名する」と、中絶問題を選挙後の筆頭課題とすることを明確にした。

(注1)中間選挙の結果を踏まえた第118議会は、202313日~202513日となる。

(注220221019日時点で、上院は民主党が50議席、共和党が50議席(ただし、投票数が割れた場合、上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領が投票に加わるため、民主党が多数党)。下院は民主党が220議席、共和党が212議席、空席が3席。

(磯部真一)

(米国)

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