米中小企業の75%がインフレ圧力を実感、ベンチャー企業は柔軟な働き方を積極導入、米金融機関調査
(米国)
米州課
2022年09月28日
米国の中小企業は、高インフレの中長期的影響を見据えながら、社内の働き方改革やデジタル活用を促進しているようだ。アメリカン・エキスプレスの傘下で、中小企業向けにオンライン上で無担保融資を行うキャベッジ(Kabbage)は9月14日、米国の中小企業の収益の回復傾向と成長見通しを調査し、とりまとめた「中小企業の回復報告書」を公表(注)した。
この調査結果によると、米国の中小企業の収益は、2022年7月に前年同月比で平均87%増加した。しかし利益はそれほど出ておらず、前年同月と比べて4%減少している。回答企業の75%は、インフレ圧力の影響を受けていると回答しており、56%はこの圧力が2023年夏まで少なくとも1年続くと予想している。現状では、8月の消費者物価指数が前年同月比8.3%の上昇となり(2022年9月14日記事参照)、連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の誘導目標を3.0~3.25%とすることを決定した(2022年9月22日記事参照)。しかし、多くの中小企業は、高インフレの短期的な解決を期待しておらず、引き続き経済的障害になると捉えているようだ。
他方、高インフレに対応するため、事業の見直しに着手している中小企業も多い。調査に回答した企業の37%が値上げを予定している。22%はサプライヤーとより良い取引を行えるよう交渉する意思を持ち、同じく22%が利益率の低い自社製品やサービスの削減を実施している。33%は顧客ロイヤリティーを高めることで今後の収益増につなげる計画だという。
高インフレは、社内体制にも影響を及ぼしている。47%が、より高額となった医療費や福利厚生、頻繁な昇給への対応が迫られていると回答した。また、労働市場における競争力の維持を目的として、柔軟な働き方が推進されるようになった。49%は、柔軟な働き方を提示し始めており、ハイブリッド勤務(27%)が中小企業の中で最も人気のある選択肢となっている。導入率が高いのは、設立して2年未満の中小企業(57%)で、新たな人材を引きつける要素となっている。
今後の成長に向けた投資として、米国の中小企業はデジタルトランスフォーメーション(41%)とデジタルマーケティングに力を入れているようだ。デジタルトランスフォーメーションに関しては、29%がデータ分析能力の強化を志向しており、31%がキャッシュフローを見直すためのツールを求めている。29%はモバイルを重視し、モバイルアプリの構築に投資している。また、回答企業の47%が、2022年に入ってデジタルマーケティング向けの費用を増やしているという。顧客の獲得に最も重要な手段として、47%がソーシャルメディア広告を挙げている。中でも、フェイスブックが重視されており、インスタグラム、ユーチューブ、リンクトイン、ツイッターと続いているという。10代においてフェイスブック離れが顕著な一方(2022年8月15日記事参照)、依然として広告効果は高いと判断されている可能性がある。
(注)調査は2022年7月14~25日に実施された。従業員10人未満の中小企業250社、11~100人の200社、101~500人の100社の計550社が回答した。
(片岡一生)
(米国)
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