米FRB、政策金利を3会合連続で0.75ポイント引き上げ、年末までに4%台半ばまで利上げの見通し

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月22日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は92021日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標2.252.5%から0.75ポイント引き上げ、3.03.25%とすることを決定した(添付資料図参照)。コア指数の伸び加速がみられた8月の消費者物価指数(CPI)などを受け(2022年9月14日記事参照)、3会合連続で通常の3倍となる0.75ポイントの引き上げ幅となった。なお、今回の決定は参加者12人の全会一致だった。

FRBは9月21日に出した声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、景気の現状について「このところ消費と生産は緩やかに増加している」とし、前回7月の「消費と生産の指標が鈍化している」との表現から現状認識を上方改定した。ロシアによるウクライナへの侵攻の経済活動への影響など、その他の表現や現状認識は前回7月の声明文と同じだった。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者19人による中長期見通しも示された。2022年の実質GDP成長率の見通しは0.2%と、前回6月の1.7%から大幅に下方改定された。他方、2022年のインフレ率(コアPCE)の見通しは4.5%と、前回の4.3%から上方改定されている。また、FF金利の引き上げについて、2022年末の見通しは4.4%と前回の3.4%から大幅に上方改定された。2022年内のFOMCは残り2回だが、この水準に達するには、0.5ポイントおよび0.75ポイントの引き上げがそれぞれ1回ずつ必要になる。また、2023年末のFF金利の見通しは4.6%と、さらに金利を引き上げる想定で、引き下げが始まるのは2024年からとされている。2025年末のFF金利は2.9%を見込み、景気を刺激も抑制もしない水準とされる長期均衡金利2.5%を上回る水準が長期間続くことを見込んでいる(添付資料表参照)。

ジェローム・パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見において、「高インフレは購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通といった必需品のコスト上昇に対応できない人々にとって大きな苦難をもたらす」「高インフレが長引けば長引くほど、高いインフレ率への期待が定着する可能性が高まる」と述べた上で、「インフレ率の低下には、トレンドを下回る成長を持続させることが必要」として、2022年の成長率とFF金利の見通しに関する今回の大幅な変更の背景を説明した。また、歴史は早まった政策転換の誤りを強く示している、と述べ、FF金利高止まりの長期化を示唆しつつ、「金融引き締めが厳しいものになるほど、あるいは長く続くほど、経済の軟着陸が一層困難になる。しかし、物価安定に失敗すれば、はるかに大きな痛みを伴うと考えることから、われわれはインフレ率を2%に戻すことに全力を尽くす」と述べた。金融引き締めの減速ないし停止の具体的なタイミングについての質問については、「(トレンド以下の成長率に加えて)労働市場の需給バランスの正常化を確認したい」「最終的にはインフレ率が2%に戻ることを示す明らかな証拠を得たい」と述べたが、具体的なタイミングについては言及を避けた。現在の米国の労働市場は失業者1人に対して2件の求人がある状態で、これが賃金および物価の上昇圧力となっており、パウエル議長は「需給バランスを欠いている」と問題視している。

(宮野慶太)

(米国)

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