欧州委、オミクロン株対応ワクチンを初承認、新たなコロナ感染対策も発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月05日

欧州委員会は91日、新型コロナウイルスのオミクロン株派生型BA.1に対応した米国ファイザーとドイツ・ビオンテック製のワクチンと、米国モデルナ製のワクチンをそれぞれ承認した。これは、欧州医薬品庁(EMA)の勧告(2022年9月2日記事参照)に基づくもので、オミクロン株対応型ワクチンとしては、EUでは初の承認となる。

また、欧州委は2日、新型コロナウイルス感染対策に関する加盟国向けの新たな政策文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。過去2年に秋から冬にかけて感染が拡大したことから、今年の秋冬でも感染の急激な拡大を防ぐべく、加盟国は対策を講じる必要があるとしている。

この政策文書によると、最も重要な新型コロナウイルス感染対策はこれまでどおり、ワクチンの初回接種(1回目と2回目のワクチン接種)と1回目のブースター接種(3回目のワクチン接種)の推進にあるとしている。4月末以降、EU域内では初回およびブースターのいずれの接種率もほとんど伸びていないことから、加盟国は現在入手可能なワクチンを利用して、引き続き接種率の向上を目指すべきとしている。また、2回目以降のブースター接種に関しては、EMAが接種勧告(2022年7月13日記事参照)で、60歳以上や重症化リスクの高い住民を優先すべきとした。また、可能ならばインフルエンザワクチンとの同時接種を推奨している。オミクロン株対応型ワクチンについては、各加盟国で優先的な接種の対象となる住民を決めるべきだとした。

この政策文書では、ワクチン接種の推進を重視する一方で、それ以外の感染予防措置の再導入も検討すべきとしている。多くの加盟国では医療・介護施設でのマスク着用が義務付けられているが、公共交通機関や屋内の公共の場でのマスク着用の義務化も、最も基本的な対策として第一に検討すべきとした。在宅勤務や大規模な集会の規制なども検討し得る感染予防措置として挙げている。こうした措置は、感染が拡大する前、あるいは感染拡大の初期段階で導入することが効果的として、EU全加盟国が明確な導入基準を設定することが重要だとした。

EU域内の移動に関しては、現時点では全ての規制が撤廃されており、今後も域内の自由な移動を確保することが重要としている。域内移動の制限は絶対的に必要な場合に限定すべきであり、加盟国はマスク着用の義務化などの感染予防措置をまず検討すべきとした。また、加盟国が域内移動に規制を課す場合には、新型コロナワクチン接種などに関するEU共通枠組み「EUデジタルCOVID証明書」(2021年7月2日記事参照)を引き続き活用することができるとし、同証明書の利用者に対しては移動制限を課すべきでないとした(2022年1月26日記事参照)。域外からのEU入域に関しては、現状に即して見直すべく、現行のEU理事会(閣僚理事会)勧告(2022年2年24日記事参照)の改正を近いうちに提案することを明らかにした。

(吉沼啓介)

(EU)

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