欧州医薬品庁、60歳以上に2回目のブースター接種を勧告

(EU)

ブリュッセル発

2022年07月13日

EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は711日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)と共同で、新型コロナワクチンの2回目のブースター接種に関する声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。EU域内では、オミクロン株の新派生型「BA.4」と「BA.5」による新たな感染拡大が始まっていることから、重症化リスクの高い住民に対する2回目のブースター接種(通算4回目の接種)を今夏から秋冬にかけて実施すべきだと、加盟国に対して勧告した。

EMAECDCは今回、既に勧告の対象となっている80歳以上に加えて(2022年4月8日記事参照)、6079歳と、年齢にかかわらず重症化リスクが高い住民に対して、2回目のブースター接種を勧告した。また、場合によっては、2回目のブースター接種とインフルエンザワクチンの接種を同時に実施することも検討すべきとした。

なお、60歳未満に対しては、重症化リスクがない限り、現時点では2回目のブースター接種を実施すべき明確な疫学的根拠はないとしている。また、現行のワクチンの感染予防効果は急速に弱まっているため、医療従事者や長期介護施設の職員などに対する2回目のブースター接種の早期実施の効果は限定的な可能性があるとした。

EUを含む欧州経済領域(EEA)(注)の半数以上の国では、高齢者を中心に、2回目のブースター接種が既に開始されている。全人口に占める2回目のブースターの接種率は、EEA全体では3.2%にとどまるものの、スウェーデンやオランダでは10%を超えている。

オミクロン株対応型ワクチンの承認は9月を予定も、現行のブースター接種を勧告

EMAは、オミクロン株に対応したワクチンに関しては、5月の発表(2022年5月13日記事参照)において9月にも承認できる可能性があるとしており、今回も同様の見通しをあらためて示した。EUにおいて、ブースター接種用のワクチンとして承認されているのは、米国ファイザーとドイツ・ビオンテック、米国モデルナのワクチンで、オミクロン株対応型として審査が進んでいるのも、これら2種のmRNAワクチンだ。ただし、承認済みの現行ワクチンも重症化や死亡に対する高い予防効果を引き続き示しているとして、重症化リスクの高い住民に関しては、オミクロン株対応型ワクチンの承認を待つことなく、現行のmRNAワクチンを利用したブースター接種を進めるべきだとした。

(注)EUの全27加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(吉沼啓介)

(EU)

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