EU理事会、EU域内移動に関する新たな勧告を採択、COVID証明書保持者の移動は原則制限なしに

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月26日

EU理事会(閣僚理事会)は1月25日、EU域内〔欧州経済領域(EEA)に参加するアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを含む〕の移動に関するEUレベルの共通の指針となる新たな勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を採択したと発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回の勧告により、域内移動においては、これまでの旅行者の出発地域の色分け外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〔欧州疾病予防管理センター(ECDC)が新型コロナウイルスの感染状況に応じて指定(2021年6月15日記事参照)〕に応じて適用する措置を区別するという、出発地を基準とした対応から、旅行者ごとの「個人レベルのアプローチ」に切り替わることになる。同勧告は、欧州委員会の提案(2021年11月26日記事参照)に大筋沿ったもので、2月1日から適用される。

同勧告によると、有効なEUデジタルCOVID証明書を所持する旅行者は、ECDCによる出発地域の色分けにかかわらず、移動制限を受けるべきでないとしている。EUデジタルCOVID証明書の取得には、ワクチン接種証明書、陰性証明書(PCR検査の場合は到着前72時間以内、迅速抗原検査の場合は到着前24時間以内のもの)、回復証明書(PCR検査による最初の陽性判定から180日以内)のいずれかが必要となる。ワクチン接種証明書に関しては、新たな関連規則が2月1日から適用開始されることに伴い(2021年12月23日記事参照)、初回のワクチン接種(2回接種型の場合は2回目、感染後の場合は1回目、1回接種型の場合は1回目)の14日後から有効となる。初回のワクチン接種に基づくワクチン接種証明書の有効期限は最後の接種日から270日間(9カ月間)となり、この有効期限後にワクチン接種証明書を新たに取得するためには、ブースター接種を受ける必要がある。

エッセンシャルワーカー、越境通勤者、12歳未満の子供を除き、有効なEUデジタルCOVID証明書を所持していない旅行者は、出発前あるいは到着後24時間以内の検査を求められる場合がある。ただし、ECDCによる地域別の色分けにおいて、感染状況が最も悪い「濃い赤」に指定された地域内外への移動に関しては、必要不可欠な場合を除き自粛を要請した上で、出発前の検査と到着後10日間の検疫・自主隔離が課されるべきとしている。また、ECDCによる地域別の色分けに関しては、これまでの新規感染者数と陽性結果の割合に基づくものから、新規感染者数、ワクチン接種率、検査の実施数に基づくより複合的な基準に変更される。

EU理事会の勧告には法的拘束力はなく、各加盟国が独自の判断で勧告内容を実施することになる。特に、新たな変異株が発生した場合などには、今回の勧告にかかわらず、加盟国の判断により、有効なEUデジタルCOVID証明書を所持する旅行者であっても、検査や検疫・自主隔離などの要件が課される可能性がある。

なお、欧州委が2021年11月に提案したEU域外からの入域制限に関する勧告案(2021年11月26日記事参照)は、今回採択されなかった。

(吉沼啓介)

(EU)

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