サリバン米大統領補佐官が講演、米国の技術優位確保を強調、「対外投資にも対処」

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月22日

米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は916日、首都ワシントンで行われたイベントで、輸出管理や投資審査などの安全保障政策に関して講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。イベントは、グーグルのエリック・シュミット元最高経営責任者(CEO)が議長を務める非営利団体「Special Competitive Studies ProjectSCSP)」が主催した。

サリバン補佐官は講演で「科学技術でわれわれ(米国)の優位性を保つことは、内政課題または国家安全保障の(どちらか単独の)課題ではない。その両方だ」と述べ、バイデン政権が現代的な産業・イノベーション戦略を追求し国内に投資することで、国際競争力の向上にも取り組んでいると指摘した。その上で、米国の技術面でのリーダーシップを維持する戦略の4つの柱として(1)米国の科学技術エコシステムへの投資、(2STEM(科学、技術、工学、数学)分野の高度人材育成、(3)米国の技術優位の保護、(4)同盟・パートナーシップの深化と統合を挙げた。

1)の米国の科学技術エコシステムへの投資に関して、今後数十年にわたり特に重要になる技術群として、コンピューティング関連技術〔マイクロエレクトロニクス、量子情報システム、人工知能(AI)〕、バイオ技術・製造、クリーンエネルギー技術を例示した。これらの技術は科学技術エコシステム全体に波及する基盤的分野だと評し、8月に成立したCHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法(2022年8月10日記事参照)、インフレ削減法(2022年8月17日記事参照)、ジョー・バイデン大統領が9月に署名した国内バイオ産業振興に関する大統領令(2022年9月14日記事参照)により、各技術への民間投資を喚起することが目標だと語った。

3)の米国の技術優位の保護では、競争相手国による機微技術の不正な窃取などに対応する必要性を説いた。具体的な政策手段の1つとして輸出管理に言及し、ロシアのウクライナ侵攻を受けた輸出管理の強化は、敵対する国にコストを課すツールとして輸出管理が米国と同盟国の戦略的資産になり得ることを証明したと指摘した。また、輸出管理を通じて、先端ロジック、メモリー半導体などでの米国の優位をできる限り拡大しなければならないと主張した。対内投資審査体制の現代化にも触れ、その一例として、バイデン大統領が915日に発表した対米外国投資委員会(CFIUS)による審査上の重点分野を定めた大統領令を示した(2022年9月20日記事参照)。

サリバン補佐官は、米国の技術優位の保護策として米国から国外への投資の審査にも言及した。バイデン政権は「機微技術への対外投資に対処するアプローチの策定を進めている。とりわけ輸出管理では捕捉できず、最も機微な分野で競争相手国の技術能力を高める可能性のある投資への対処だ」と説明した。複数の米国メディアは、バイデン大統領が近く、米国企業による対外投資の審査に関する大統領令を発表する見通しと報じている。米政治専門誌「ポリティコ」(97日)によると、バイデン政権は、中国への投資を阻止する権限を政権に付与することや、企業に対し投資に関する情報開示を求める権限の付与を検討中とされる。

(甲斐野裕之)

(米国)

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