バイデン米大統領、対内投資審査上の重点分野・要因に関する大統領令に署名

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月20日

米国のジョー・バイデン大統領は9月15日、外国からの投資に関する安全保障上のリスクを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が重点的にフォローすべき分野・要因を定めた大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。

米国は2018年に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」に基づき、CFIUSが審査すべき対象取引の拡大や審査手続きの強化などを行った。今回の大統領令は、FIRRMAで制定したCFIUSの権限や手続きに変更を加えるものではなく、あくまでバイデン政権が変化し続ける安全保障上の脅威に対応するために、CFIUSが今後重点的にフォローすべき分野やその要因を定めたものとなる。大統領令を要約したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、重点分野は次の5つとしている。

  1. 防衛産業以外も含めた重要製品の国内サプライチェーンの強靭(きょうじん)性:同盟・友好国のサプライヤーを含むサプライチェーン全体での代替サプライヤーによる多様性の度合いや、米国政府との供給関係、特定のサプライチェーンにおける外国人による所有や支配の集中度合いなどを検証する。
  2. マイクロエレクトロニクス、人工知能(AI)、バイオ技術・製造、量子コンピューティング、先端クリーンエネルギー、気候適応技術など米国の安全保障に影響を与える分野の米国の技術的リーダーシップへの影響:これら技術分野について、科学技術政策室(OSTP)は、CFIUSに属する他の政府機関と相談の上、定期的にリストを公開する。CFIUSは、対象となる取引が米国の安全保障を損なう可能性があるかや、取引に関与する外国人が米国の安全保障に脅威を与える第三者とつながりを持っているかどうかを検証する。
  3. 米国の安全保障に影響を与え得る投資の傾向:単一の投資案件として見れば限定的な脅威でも、過去の取引との関連で見ると、機微技術の移転を促進したり、安全保障に損害をもたらしたりすることがある。CFIUSは単一分野または関連分野の複数の買収や投資という観点から、生じるリスクを適宜検証する。
  4. 安全保障に損害をもたらす可能性のあるサイバーセキュリティー上のリスク:サイバー攻撃などを行う能力と意図を持つ外国人または関連する第三者に、米国の安全保障にリスクもたらすアクセスを提供する可能性があるかを検証する。例えば、米国内の選挙結果や、重要インフラの運用、通信の機密性・統合性・利用可能性に対する影響力の行使などがこれに含まれる。
  5. 米国人の機微なデータに対するリスク:技術が進歩する中で、大規模なデータセットへのアクセスを許せば、従来は特定不可能だったデータの特定や非匿名化が可能となる。CFIUSは、対象となる取引が米国人の機微なデータを扱う米国事業を含むかどうかや、外国投資家が関係を持つ者が安全保障に損害をもたらすかたちでそれら情報を悪用する意図・能力があるかを検証する。

CFIUSの委員長を兼ねるジャネット・イエレン財務長官は15日、「大統領令は、幾つかの重要分野の安全保障上のリスクに対するCFIUSの関心度合いの高まりを明らかにするとともに、米国の開放的な投資政策を維持しつつ安全を保障するというCFIUSの狙いを先鋭にするものだ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

(磯部真一)

(米国)

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