米商務省、ペプチド自動合成技術の輸出管理に向けパブコメ募集
(米国)
ニューヨーク発
2022年09月16日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月13日、2018年に成立した輸出管理改革法(ECRA)に基づき、ペプチドの自動合成のための特定の機器・技術を輸出管理対象に追加する規則の制定案を官報で公示した。ペプチドの自動合成技術の潜在的な使用が米国の安全保障に与える影響や、輸出管理を行う場合の効果的かつ適切な範囲などに関して、10月28日までパブリックコメントを募集する(注1)。
ECRAは商務省に対し、米国の安全保障にとって不可欠な新興・基盤的技術(「1758条の技術」、注2)を特定し、適切な輸出管理を行うよう義務付けている。BISは今回、ペプチドの自動合成機器を、1758条の技術として評価すべき対象として特定した。BISは、合成技術・機器の進歩により、ペプチドの合成が高速化し、合成できるペプチド製品の長さが長くなっていると指摘。タンパク質毒素は既に輸出管理対象〔規制品目リスト(CCL)の輸出管理分類番号(ECCN):1C351〕となっている一方、タンパク質を構成するポリペプチドの合成に使われるような特定の合成技術・機器(自動合成機器)の輸出管理を行わない場合に、それら技術・機器が、生物兵器目的で輸出管理対象の毒素の生産に用いられるリスクがあると説明している。
パブリックコメントでは、米国におけるペプチドの自動合成機器の開発状況や入手可能性、主な用途などを募集する。また、輸出管理を実施した場合に、この分野での米国の技術リーダーシップに与える影響のほか、米国単独ではなく、多国間で輸出管理を行う是非などについても意見を求める。
輸出管理を担当するアラン・エステべス商務次官は9月12日のプレスリリースで、今回の規則の制定案は「われわれの国家安全保障にとって不可欠な技術を特定し、適切な管理を実施するという議会の要請に対する、BISの思慮深く、証拠に基づいたアプローチだ」と指摘した。
(注1)連邦政府ポータルサイト(ドケット番号:BIS–2022–0023)へのオンライン提出もしくは、PublicComments@bis.doc.gov宛てにEメールでの提出(タイトルにRIN 0694-AI84を含める)が可能。
(注2)BISは5月、ECRAの1758条で特定が義務付けられている「新興技術」と「基盤的技術」について、今後の規則策定に当たっては各技術を区別せず、全て「1758条の技術」として表すとの方針を発表した(2022年5月24日記事参照)。米国の輸出管理規則については、ジェトロの調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令(2019年9月)」「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策(2021年8月)」を参照。
(甲斐野裕之)
(米国)
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