中国企業による相談内容、台湾との契約履行に関する問い合わせも増加

(中国、米国、台湾)

中国北アジア課

2022年09月05日

中国国際貿易促進委員会(以下、CCPIT)は829日に実施した定例記者会見において、8月中に中国企業などから寄せられた貿易投資面の相談について、主な内容を明らかにした。昨今の中国による台湾からの輸入一時停止措置などに伴い、中国企業の台湾との間の取引において契約上のトラブルが生じている様子も見受けられる。

相談は、CCPITが運営するウェブサイト「貿法通外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を通じて受けたもの。「貿法通」(注1)は、海外ビジネスに取り組む企業(主に中国企業)に向けて、各国・地域の法制度などに関する実務的な情報を発信するプラットフォーム。

CCPITの孫暁報道官は会見に際し、現地メディアからの質問に答えるかたちで、相談内容について紹介。孫報道官によれば、相談内容は5つの分野に大別され、これらで全体の8割を占めるとした。主な内容は以下のとおり。

  • 「国際貿易に関する問題」(全体に占める割合:46%):手続きに関する問い合わせが比較的多い。特に8月には台湾の産業チェーンに関わる貿易における契約履行(不可抗力による契約違反リスク、支払い延期、契約取り消しなど)に関連する問い合わせが多く寄せられた(注2)。
  • 「外国法の順守に関する問題」(12.7%):特に米国で621日に施行された「ウイグル強制労働防止法」(注3)や、89日のバイデン大統領の署名により正式に成立した「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案」(2022年8月10記事参照)、ウクライナ情勢に関わる問題などに対し、企業の関心が高まっているとみられる。

孫報道官はまた、「こうした国際的に関心が高いトピックスに関しては、年後半にかけて情勢がさらに変化していくことも予期される。海外貿易・投資を行う企業にとり、国外におけるコンプライアンス体制の構築および調整は、徐々に大きな関心事項となるだろう」とコメントした。なお、「貿法通」では、「ウイグル強制労働防止法」や「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案」に関する特集ページがある(202291日時点)。中国企業などに向け、両法(および法案)の概要のほか、弁護士など専門家による解説記事などが多数掲載されている。

  • 「海外投資に関する問題」(9.5%):主にロシア、ベトナム、アゼルバイジャンなど「『一帯一路』沿線諸国」 のビジネス環境、投資および工場建設、企業設立手続きなどに関する問い合わせが多い。
  • このほか、残りの2分野は「紛争解決(仲裁)に関する問題」(9.5%)および「知的財産権に関する問題」(4.8%)。

(注1)正式名称は「中国国際貿易促進委員会企業海外貿易投資法律総合支援プラットフォーム」。

(注2)中国は8月以降、天然砂の台湾向け輸出の一時停止や台湾産かんきつ類、タチウオ、冷凍アジの輸入通関受理の一時停止といった措置を相次いで実施している(202284日記事84日記事参照)。また、中国海関総署が運営する輸入食品企業データベースで、多数の台湾の食品関連企業が「輸入一時停止」の状態となるといった事態も生じている(202289日記事参照)。

(注3)米国のウイグル強制労働防止法については、ジェトロウェブサイトの特集ページを参照のこと。

(小林伶) 

(中国、米国、台湾)

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